2023 Fiscal Year Research-status Report
網羅的プロテオミクスが解明するIgA腎症の糸球体メサンギウム細胞死
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23K07729
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Research Institution | Fujita Health University |
Principal Investigator |
齊藤 成 藤田医科大学, 医学部, 講師 (10456444)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
高橋 和男 藤田医科大学, 医学部, 教授 (90631391)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | IgA腎症 / レーザーマイクロダイセクション法 / 質量分析法 |
Outline of Annual Research Achievements |
IgA腎症(IgAN)は、世界的に最も一般的な糸球体腎炎であり、そのうちの30~40%が腎臓病の末期に進行する。IgANでIgAが沈着する主な部位は糸球体メサンギウムである。糸球体には様々な病変が定義されているが、糸球体だけでなく尿細管病変もオックスフォード分類のMESTスコアに含まれている。われわれは、腎生検ホルマリン固定組織に対するレーザーキャプチャーマイクロダイセクション質量分析法の新しいワークフローを開発した。糸球体および尿細管を対象としたこのワークフローを用いて、IgANの病態および疾患進行に関連する分子の検出を試みた。
糸球体プロテオーム解析により、少なくとも2つのユニークペプチドを持つ1807個のタンパク質が定量された。このうち85の蛋白質は、IgAN患者において対照群と比較して存在量が有意に異なっていた。保存療法を受けたIgAN患者と比較して、免疫抑制療法を受けたIgAN患者では78の蛋白質が有意に存在量が異なっていた。これらの蛋白質は主に補体系と細胞外マトリックス蛋白質群であった。 尿細管プロテオーム解析では、少なくとも2個のユニークペプチドを持つ2354個のタンパク質が定量された。73個のタンパク質がIgAN患者と対照群との間で有意に存在量が異なり、25個はより多く、48個はより少なかった。保存療法を受けたIgAN患者と比較して、免疫抑制療法を受けた患者では75の蛋白質の存在量が有意に異なっていた。
これらの蛋白質には、細胞外マトリックス蛋白質や上皮間葉転換蛋白質が含まれていた。IgANの糸球体と尿細管をレーザーで微小切開し、プロテオーム解析を行ったところ、補体系と上皮間葉転換に関連するタンパク質を同定することができた。これらの蛋白質は、IgANの病態や疾患の進行に関連している可能性がある。したがって、各タンパク質についてさらに研究を進める必要がある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
レーザーマイクロダイセクション法により糸球体と尿細管のプロテオミクスは解析が安定し、データが取れている。解析の検体数を増やし、IgA腎症では32検体(免疫抑制療法患者18検体、保存療法患者14検体)、腎臓疾患コントロール5検体(膜性腎症患者2検体、微小変化型ネフローゼ症候群3検体)、正常コントロール10検体と十分解析データとして信用できるものに近づいた。データ解析は現在進めているところだが、IgA腎症の糸球体プロテオミクスで病態活性化のマーカー候補がいくつか上がってきている。
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Strategy for Future Research Activity |
IgA腎症の病態活性化のマーカーを絞りこむために、我々がすでに得ている異常糖鎖IgA免疫複合体のデータとの照合をおこなっている。それらの候補タンパクを免疫染色の手法を用いて、確認して行く。病態活性化の候補蛋白が絞れたら、これらのタンパク質にヒト糸球体メサンギウム細胞を用いて、細胞死誘導が起きるかRNAseqとウエスタンブロットやプロテオミクスなどを用いて、解析して行く。
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Causes of Carryover |
レーザーマイクロダイセクションによるプロテオミクスの基礎実験での質量分析の費用が少なく済んだため、本実験の費用に充てられた。来年の免疫染色と培養実験の費用が輸入消耗品の物価高騰のため、当初の予算よりもかかりそうなので、そちらに充当する予定である。
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