2023 Fiscal Year Research-status Report
筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群の創傷治癒過程におけるデルマタン硫酸の役割
Project/Area Number |
23K07780
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Research Institution | Shinshu University |
Principal Investigator |
吉沢 隆浩 信州大学, 学術研究院総合人間科学系, 助教 (40713392)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岳 鳳鳴 信州大学, 学術研究院医学系, 助教 (20532865)
水本 秀二 名城大学, 薬学部, 准教授 (40443973)
古庄 知己 信州大学, 学術研究院医学系, 教授 (90276311)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群(mcEDS) / 疾患モデル動物 |
Outline of Annual Research Achievements |
筋拘縮型エーラス・ダンロス症候群(mcEDS)は、CHST14遺伝子(mcEDS-CHST14)もしくはDSE遺伝子(mcEDS-DSE)の病的変異によって、それらにコードされるデルマタン 4-O-硫酸基転移酵素1 (D4ST1)やデルマタン硫酸エピメラーゼ(DSE)の活性が失われることで引き起こされる。D4ST1とDSEはいずれもデルマタン硫酸(DS)合成に必要な酵素であり、mcEDS患者では、どちらかの活性消失によって全身性にDSが消失または減少する。デルマタン硫酸は、コラーゲン細線維の集合に関わることが知られている。コラーゲンは組織強度の維持に重要な細胞外マトリックスの構成成分であり、mcEDS患者では結合組織脆弱性や進行性の脊椎変形、関節拘縮等の症状を呈する。mcEDSで特に重篤な症状として、反復性巨大皮下血腫などの皮膚症状や脊椎変形等が知られており、病態メカニズム解明と治療法開発が求められている。 mcEDS患者の95%がCHST14遺伝子の変異を有することや、mcEDS-CHST14とmcEDS-DSEどちらもDSの欠乏という共通の要因が病態の原因と考えられていることから、本研究では疾患モデル動物として、Chst14遺伝子欠損マウス(Chst14 KO)を用いた解析を行っている。申請者らはこれまでに、Chst14 KOの皮膚においても患者と同様のDS消失や、コラーゲン細線維の集合不全、組織強度低下、創傷治癒の遅延といった表現型を呈することを明らかにしてきた。2023年度は、DS欠乏による創傷治癒遅延の原因として、創傷時の皮膚組織で野生型マウスと異なる変動を示す要因を探索するために、Chst14 KOで創傷治癒モデルを作成し、経時的な組織サンプルの採取を進めた。また、初代培養皮膚線維芽細胞の培養および、細胞増殖に関する実験条件の構築を行った。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
初代培養皮膚線維芽細胞を用いた解析の条件検討に、当初の想定よりも時間を要している。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度には、前年度に採取した皮膚組織サンプルを用いて、開放創作成前、作成1、3、6日後の皮膚組織での遺伝子発現を解析する。炎症性サイトカインや炎症細胞、細胞増殖マーカーや線維芽細胞増殖因子および上皮成長因子とそれらの受容体の遺伝子発現の変動を検討する。初代培養皮膚線維芽細胞を用いた解析についても引き続き検討を進め、野生型とChst14 KO由来の細胞での、スクラッチアッセイやMTTアッセイによる細胞増殖能の違いや、DS添加による細胞増殖や細胞内シグナルの変化を解析する。
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Causes of Carryover |
2023年度は、マウスからの組織採取が大きな割合を占め、その後の解析に要する消耗品の使用が当初の想定よりも少なかったため。2024年度は、次年度使用額を含めた予算で試薬消耗品等を購入し、採取した組織や培養細胞を用いた解析を進める。
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