2023 Fiscal Year Research-status Report
乾癬併存症におけるCaveolin-1を介した病態的関与と発現制御
Project/Area Number |
23K07789
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Research Institution | Yokohama City University |
Principal Investigator |
山口 由衣 横浜市立大学, 医学研究科, 教授 (60585264)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
渡邊 友也 横浜市立大学, 医学部, 講師 (00733461)
渡邉 裕子 (國見裕子) 横浜市立大学, 医学部, 講師 (10567605)
奥山 朋子 横浜市立大学, 医学部, 助教 (90806928)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 乾癬 / 併存症 / 脂肪性肝疾患 / カベオリン |
Outline of Annual Research Achievements |
乾癬は、IL-23/IL-17/TNFαなどを主体とする免疫学的炎症と表皮過剰増殖を特徴とする。 肥満、糖尿病、非アルコール性脂肪性肝疾患(NAFLD/NASH)などの併存症を伴いやすく、全身性炎症性疾患として認識されているが、その共通病態や代謝制御に関しては未解明の部分が多い。我々はこれまで、細胞膜タンパクのCaveolin-1(CAV-1)発現異常が、乾癬病態における炎症を助長することを報告してきた。興味深いことに、糖尿病やNAFLDなどの病態におけるCAV-1の重要性が近年着目されているが、乾癬との関連は不明である。そこで、CAV-1を介した様々な代謝異常が、乾癬皮膚炎のみならず、肥満やNAFLDなどの併存症に関与するという仮説を立て、Psoriatic diseaseとしての相互病態解明、さらにはCAV-1制御を標的とした治療応用への基盤を構築することを本研究の目的とした。具体的には、高脂肪食負荷とイミキモド塗布を行った乾癬併存症マウスモデルを用いて、NASHや肥満を中心とした併存症評価とCAV-1の病態関与の解明、さらには、CAV-1発現制御を行うことでの併存症が改善するかを検証する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究初年度の2023年は、高脂肪食負荷(HFD)とイミキモド(IMQ)負荷を組み合わ、乾癬併存症マウスモデルを作成し、体重、肝臓重量、CTを用いた内臓脂肪や皮下脂肪体積率、肝臓のHE染色増を用いてNAFLD activity scoreを評価、比較した。3か月間のHFD負荷により体重や内臓脂肪・皮下脂肪体積は通常食マウス(ND)に比較して有意に増加した。IMQ負荷により体重や脂肪体積は低下する傾向があり、これはHFDマウスのほうがNDより傾向が強かった。一方、肝臓重量は、各群で有意な差を認めず、そのため、体重あたりの肝臓重量は、IMQ負荷で相対的に増加する傾向にあった。興味深いことに、HFDマウスの肝臓HE標本を用いて、脂肪変性、肝細胞バルーミング、小葉変性を評価することでNAFKD/NASH activity scoreを評価したところ、IMQ負荷による悪化を認めた。これらの結果は、IMQ負荷の炎症によって体重や脂肪体積は低下するものの、脂肪性肝炎は悪化する傾向を示している。さらに、肝臓におけるCAV-1発現量評価の条件設定や、HepG2細胞を用いた脂肪性肝炎のin vitro実験系の確立を現在行っている。様々な実験系の条件設定に時間を要しているが、おおかた順調に進んでいると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
乾癬併存症によるCAV-1発現異常評価は肝臓にフォーカスして評価を行う。CAV-1発現異常が認められた場合には、肝細胞を用いたNAFLD評価モデルの培養実験系において、RNA干渉法などでCAV-1発現を制御し、サイトカイン・アディポカイン産生、ミトコンドリア機能としてのエネルギー代謝、活性酸素量などの変化を解析する。また、CAV-1のscaffolding domain (CSD: aa82-101)は、CAV-1機能ペプチドとして作用することが知られており、これまでの研究で、CSDペプチド投与はIMQによる乾癬様皮膚炎を改善することを示してきた。今回、CAV-1の関与が示唆された場合に、CSDを連日皮下投与するとで、皮膚炎のみならず、脂肪性肝炎の改善効果があるかを、HFD+IMQ乾癬併存症モデルで検討する。また、脂肪性肝炎のin vitro実験系においても、乾癬炎症によって誘発された炎症をCSDが抑制しうるかを評価することで、CSDが乾癬のみならず併存症に対する治療的意義がある可能性を検討していく。さらに近年、CSDをさらに短鎖にすることで、より付加的な効果を示す可能性を検討しており、本課題においても様々なCSDペプチドを用いる可能性がある。
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Causes of Carryover |
2023年度の後半に開始予定であったヒト肝細胞を用いたin vitro実験に関して、使用したい試薬やキットが国内になく、世界的にも品薄のようで、購入を待っている状態である。そのため、使用予定であった研究費を次年度に使用することになった。
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Research Products
(2 results)