2023 Fiscal Year Research-status Report
多発性骨髄腫の炎症性微小環境におけるSTAP蛋白の役割
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23K07812
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
一井 倫子 大阪大学, 大学院医学系研究科, 講師 (30633010)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
保仙 直毅 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (10456923)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 多発性骨髄腫 / 腫瘍微小環境 |
Outline of Annual Research Achievements |
STAPファミリーは、N端側にPHドメインとSH2ドメインを有し、炎症性シグナルを伝達する蛋白と結合してそのリン酸化を制御するアダプター蛋白である。申請者らを含む複数の研究グループから、リンパ球、マクロファージ細胞の中に存在するSTAP-2蛋白が、IL-2、IL-6、M-CSF、CXCL-12といったサイトカイン・ケモカインの受容体やトール様受容体(TLR)からの刺激に反応して、VAV1、STAT5、Myd88といった細胞内蛋白と結合し、細胞の遊走・浸潤、増殖、サイトカイン産生機能を調整している事が報告されている(総説:Ichii et al. Exp Hematol. 2022)。さらに最近、申請者らは、STAP-1、STAP-2がTCRシグナルの活性化にも関わっている事(Saitoh, Ichii et al. J Immunol. 2022)、慢性骨髄性白血病幹細胞の生存(Toda, Ichii et al. Oncogene, 2021)や造血ストレスに曝された骨髄の造血機能(Ichii et al. Haematologica, 2020)をSTAP蛋白が制御している事を明らかにした。 骨髄に発症する形質細胞の悪性腫瘍である多発性骨髄腫は、腫瘍細胞存在により誘導される炎症性環境にニッチ構成細胞が一律に影響を受ける事が知られている。本研究では、骨髄腫独自に形成される炎症性環境下に存在するニッチ細胞におけるSTAP蛋白の役割を明らかにする事を目的としている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
多発性骨髄腫の腫瘍微小環境を構成する様々な細胞集団におけるSTAP蛋白が果たす役割を明らかにするため、2023年度には、微小環境内の細胞分画についてハイパラメーター・フローサイトメーターを用いた解析を主に進めた。申請者らの施設では、2021年に最大30カラーの解析と6種類の細胞分画の単離が可能なハイパラメーター・フローサイトメーター(BD FACSymphony S6)が導入されており、本研究ではS6を用いて骨髄腫ニッチの各細胞サブセットの分布について解析し、健常者コントロール(大腿骨頭置換術または脊柱除去術を施行される患者由来の骨髄)と比較をおこなった。血球系の免疫細胞については、単球やNK細胞の増加、B前駆細胞の減少、T細胞の疲弊マーカー発現上昇を伴うterminal effector T細胞の増加といった、single-cell RNAseq解析等の既報に一致した結果が得られた。 本研究では間葉系細胞(Mesenchymal stromal cells; MSC)や血管内皮細胞などの非血液系ニッチ細胞についても検討を進める計画である。本年度は骨髄腫ニッチに存在する細胞を同定するために骨髄腫ニッチMSCに特異的なマーカーの探索を行った。診断時の骨髄腫患者骨髄から単離したMSCを用いたbulkRNAseqの解析結果を基に、健常者に比べ有意に発現上昇する細胞膜表面蛋白15種類について、フローサイトメトリーでの発現検討を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度の解析により、骨髄腫発症により増減する免疫細胞サブセットを同定できた。次年度では変動する細胞分画を単離し、STAP蛋白の発現変化および免疫機能の解析を進めていく方針である。骨髄腫ニッチ特異的MSCマーカーは同定できていないが、病理学的な検討などを取り入れて、MSCの作用についても検討を進める。
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