2023 Fiscal Year Research-status Report
Innovation of the novel therapeutic strategies against p53 mutated acute myeloid leukemia.
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23K07824
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Research Institution | Foundation for Biomedical Research and Innovation at Kobe |
Principal Investigator |
西村 耕太郎 公益財団法人神戸医療産業都市推進機構, その他部局等, 研究員(上席・主任研究員クラス) (30909982)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | AML / TP53 |
Outline of Annual Research Achievements |
p53は細胞のストレス防御の中枢を担うがん抑制遺伝子の一つである。実際にp53変異は種々の腫瘍でがん横断的に認められるが、p53の異常がいかにして難治性腫瘍に寄与しているのか、その中枢を担う分子機構は未だ不明である。本研究は、我々が開発したp53変異予後不良/治療難治性AMLモデルを用いて、p53と予後不良を繋ぐ未解明の分子機構を明らかにし、新たな治療標的を探索する上で礎となるデータを集積と目的としている。 研究計画1に関し、変異型p53とp53欠失の生物学的相違の探索のため、p53欠損細胞株TF-1を用いて赤血球分化実験を行った。その結果、p53 野生型やKOとは異なり、R273H変異体過剰発現TF-1細胞は赤血球分化が抑制された。さらに、RNA/ATAC-seqを解析し、遺伝子発現とクロマチン状態を解析し、p53 R273H特異的な特徴が見出された。さらにp53変異体と協調する分子をビオチン化近位標識法による相互作用分子の同定、候補分子の解析により、赤血球分化、白血病との関連を解析進行中である。 研究計画2に関し、KEAP1を標的とした治療戦略については、NRF2との二重欠損によりKEAP1への脆弱性が解除され、その妥当性が示され、通常の腫瘍とは異なるレドックス代謝を利用しているものと考えている。レドックス代謝の評価のため、TF- 1細胞の細胞内還元物質、酸素消費速度の測定によりp53変異体発現細胞での代謝バランスの解明を試みた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究計画1に関し、当初の計画通りに進行しており、変異型p53過剰発現とp53欠損細胞株TF-1を用いてEPOによる分化実験を行った結果、p53 野生型は分化を促進する一方やTP53KOとは異なり、TP53R273H変異体過剰発現では赤血球分化が抑制された。さらに、RNA/ATAC-seqを解析したところ、p53 R273Hは野生型と異なり、特に造血幹細胞、赤血球分化に必須のGATAファミリーの結合領域のオープンクロマチンを阻害する所見をATAC-seqにより得ており、p53変異体のDNA結合能やエピゲノム複合体への作用が示唆された。ビオチン化近位標識法には、APEX2ビオチン化酵素として選定し、ベクタープラスミドを構築した。 研究計画2に関し、当初の計画通りに進行している。KEAP1を標的とした治療戦略については、NRF2との二重欠損によりKEAP1への脆弱性が解除され、その妥当性が示され、通常の腫瘍とは異なるレドックス代謝を利用しているものと考えている。レドックス代謝の評価のため、TF- 1細胞の細胞内NAD、GSH、酸素消費速度を測定したところ、p53変異体発現細胞では酸素消費量が高いことが明らかとなった。より詳細な代謝の変容を解析するため、メタボローム解析を開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
研究計画1に関し、変異型p53の赤血球分化への影響をさらに詳細に解析するため、複数の白血病細胞株に遺伝子導入し、細胞分化、遺伝子発現、クロマチン状態を統合的に解析する。ビオチン化近位標識法には、APEX2ベクタープラスミドをTF1細胞に導入し、GM-CSFまたはEPO存在下で、ビオチン化刺激をH2O2により刺激し、質量分析により相互作用分子を同定する。RMN細胞や赤血球分化可能なヒト細胞株でCRISPR-Cas9を用いて同定した遺伝子をKOし、経時的にFACSを用いて表面マーカーによりその赤血球分化段階を解析する。KOにより分化の亢進や遅延、そのほか形態的異常などが見られるかどうかをマウス骨髄細胞を単離後、CRISPR-KO細胞を作成し、ミエロイド細胞、赤血球前駆細胞やB前駆細胞を評価する半固形培地によりミエロイド、赤芽球、B細胞のコロニーアッセイを行い、細胞のもつ分化能の違いを評価する。KOマウス骨髄細胞のレシピエントマウスへの移植実験を行う。経時的に末梢血、骨髄を採取し、FACS解析により血液細胞での表現型を解析する。また連続骨髄移植実験により、その幹細胞能を評価する。 研究計画2に関し、RMN白血病細胞、ヒトAML細胞株のうち、KEAP1阻害剤耐性となるHSPC集団を同定するべく、in vitro処理下での長期培養や、連続移植モデルのレシピエントマウスにKEAP1阻害剤を投与後、耐性化する前後の検体で白血病細胞を単離する。AML細胞内の遺伝子発現と表面抗原を解析し、特に、感受性細胞に比べて耐性群に特異的な細胞クラス ターを同定し依存するパスウェイや細胞集団の特徴付けを行う。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に合わせ、使用予定の試薬等に変更が生じ、予定の予算との差異が生じた。
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