2023 Fiscal Year Research-status Report
ワクチン開発に資する単純ヘルペスウイルス獲得免疫回避機構の解明
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23K07919
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
丸鶴 雄平 東京大学, 医科学研究所, 助教 (50825750)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | HSV / 免疫回避 |
Outline of Annual Research Achievements |
HSVの感染、もしくは再活性化を予防する為のワクチンは古くから重要な抗HSV戦略として位置づけられ、数十年にわたって開発が試みられているが未だ実用化には至っていない。HSVエンベロープ上の糖蛋白質はウイルスの細胞への侵入に重要である一方で、生体内において抗体依存的な免役応答の標的となり、その名の通り糖蛋白質は高度に糖鎖修飾される。構造解析、及び中和抗体のエピトープの情報から、これらの糖鎖修飾は抗体とウイルス糖蛋白質の結合を阻害する「グリカンシールド」として機能すると考えられてきたが、HSVにおいては実験的な検証は全く実施されていなかった。そこで本研究は、糖蛋白質上の糖鎖修飾を欠失させた組換えHSV-1を作出し、これらの組換えウイルスのヒト中和抗体に対する感受性や、獲得免疫回避能、及びHSVワクチンとしての有用性の解析を実施する。本研究では、HSV糖蛋白質の中でヒト中和抗体の主要な標的として知られるエンベロープ糖蛋白質の糖鎖修飾に着目し解析を実施している。これまでに、当該糖蛋白質上の特定の糖鎖修飾を欠失させた組換えHSV-1を作出し、この組換えウイルスのヒト中和抗体に対する感受性が野生株と比較して上昇することを見出した。また、この組換えウイルスが感染した感染細胞は野生株感染細胞と比較してヒト抗体依存的な抗体依存性細胞障害(ADCC)活性誘導能が上昇した。これらの結果は本研究で着目した糖鎖修飾がヒト由来抗HSV抗体に対するグリカンシールドとして機能し、獲得免疫からの回避に重要である可能性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
これまでに、ヒト中和抗体からの回避に重要なHSV-1糖蛋白質上の糖鎖修飾を同定し、この糖鎖修飾がHSV-1感染細胞のADCC活性誘導に対して抑制的に働くことを見出すことができた。従って、本研究で着目した糖鎖修飾は生体においても抗体を介した獲得免疫からのHSV-1の回避に寄与する可能性が示唆された。
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Strategy for Future Research Activity |
培養細胞を用いたこれまでの解析により、抗体からの回避に重要なHSV-1糖蛋白質上の糖鎖修飾を同定することができたが、この糖鎖修飾が生体内における抗HSV-1抗体からの回避に寄与するかは不明である。今後はこの糖鎖修飾が生体内においても抗HSV-1抗体からの回避に寄与するかを明らかにするために、マウスモデルを用いた検証を実施する。
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Causes of Carryover |
2023年度に購入を予定していた一般試薬、酵素類、プラスチック器具、牛胎児血清、等の試薬は研究室の在庫で賄うことができた。2024年度以降はマウスモデルを用いた解析を実施する為、今年度使用しなかった費用をマウス購入費等に当てる予定である。
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[Presentation] Dual Impacts of a Glycan Shield on the Envelope Glycoprotein B of HSV-1: Evasion from Human Antibodies In Vivo and Neurovirulence2023
Author(s)
Ayano Fukui, Yuhei Maruzuru, Shiho Ohno, Moeka Nobe, Shuji Iwata, Kosuke Takeshima, Naoto Koyanagi, Akihisa Kato, Shinobu Kitazume, Yoshiki Yamaguchi, Yasushi Kawaguchi
Organizer
47th International Herpesvirus Workshop
Int'l Joint Research
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