2023 Fiscal Year Research-status Report
Why is the mutation at amino acid 262 in PLSCR1 involved in the severity of COVID-19?
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23K07943
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
草野 秀一 鹿児島大学, 医歯学域ヒトレトロウイルス学系, 准教授 (10350662)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | PLSCR1 / SARS-CoV-2 / タンパク質相互作用 |
Outline of Annual Research Achievements |
新型コロナウイルス感染症(COVID-19)重症化患者の全ゲノム解析により、Phospholipid scramblase 1(PLSCR1)の262番アミノ酸のヒスチジンからチロシンへの変異(H262Y変異)が重症化に関与すると示唆される知見が報告されているが、この変異がPLSCR1の機能をどのように変化させ、COVID-19の重症化に関与するのか全く不明である。そこで、本研究では、このH262Y変異がPLSCR1の宿主転写因子及び新型コロナウイルス(SARS-CoV-2)タンパク質との相互作用に及ぼす影響を解析した。 まず、野生型及びH262Y変異PLSCR1を複数のPLSCR1ノックアウト細胞株に発現させ、転写因子応答配列依存的に発現するルシフェラーゼレポーター遺伝子を用いた解析を実施したところ、野生型及びH262Y変異PLSCR1共にNF-κB、AP-1、cAMP応答配列及びインターフェロン応答配列依存的な転写を抑制することが明らかになったが、その機能に有意な差を見出すことはできなかった。 次に、SARS-CoV-2感染に重要であるスパイクタンパク質との相互作用を検討したところ、野生型及びH262Y変異PLSCR1共にスパイクタンパク質のS1及びS2'領域と直接相互作用することを見出した。スパイクタンパク質はS2'領域で共重合し三量体を形成することが、ウイルス感染に必須であることが知られているので、アミノ末端から機能領域を欠失させたS2'の変異体を作製したところ、S2'の1063~1163アミノ酸領域が野生型及びH262Y変異PLSCR1共に相互作用する部位であることが明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
SARS-CoV-2のスパイクタンパク質の発現系を構築し、様々なスパイクタンパク質の欠失変異体を発現することが可能になった。そして、その系を用いてPLSCR1とスパイクタンパク質が直接相互作用する事及びPLSCR1が標的とするスパイクタンパク質の領域を一つ決定することができた。 今後、この系を用いることで、野生型とH262Y変異PLSCR1がスパイクタンパク質の機能にどのような影響を及ぼすのかの解析が効率よく実施されると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
①:カルボキシル末端から機能領域を欠失させたS2'の変異体を作製し、野生型及びH262Y変異PLSCR1とスパイクタンパク質との相互作用に関する領域の絞り込みを行う。 ②:スパイクタンパク質の共重合に野生型及びH262Y変異PLSCR1が及ぼす影響の差異をS2'の全長及びPLSCR1相互作用領域を用いた免疫沈降実験により明らかにする。 ③:野生型及びH262Y変異PLSCR1によって発現が制御される宿主遺伝子をDNAマイクロアレイ、もしくは、RNA-seqによって同定する。
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Causes of Carryover |
令和5年度はPLSCR1とSARS-CoV-2スパイクタンパク質の相互作用解析に焦点を当てたことで、網羅的な遺伝子発現解析を令和6年度に実施することになり、その予算を次年度に持ち越すことになった。
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Research Products
(2 results)