2023 Fiscal Year Research-status Report
シングルセルゲノミクスによる視床下部・下垂体―甲状腺系の分泌機構と病態の解明
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23K07982
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Research Institution | Gunma University |
Principal Investigator |
堀口 和彦 群馬大学, 医学部附属病院, 講師 (10737943)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
松本 俊一 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (70737486)
石田 恵美 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (80806357)
吉野 聡 群馬大学, 医学部附属病院, 助教 (90786089)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 中枢性甲状腺機能低下症 / 甲状腺刺激ホルモン / 下垂体 / 甲状腺刺激ホルモン放出ホルモン |
Outline of Annual Research Achievements |
下垂体におけるTRHや甲状腺ホルモンのTSH産生細胞への作用の分子機構や、中枢性甲状腺機能低下症における下垂体のTSH産生細胞の分子機構の解明を目指し、TRH欠損マウス下垂体のscRNA-seq解析を開始した。具体的には、野生型マウスとTRH欠損マウスから下垂体組織を摘出後細断し、collagenaseやtrypsinなどの酵素を含むHank’s液内で培養し、フィルターを通して、Hank‘s液と凍結保存用培地を混合したもので再懸濁することで、条件設定を行い1つのマウス下垂体から15万個採取した。細胞生存率は下垂体処理直後約90%前後であった。個別の細胞ごとの3’ライブラリ作成を、10x genomics社のクロミウム装置を用いて、個別化のためのバーコードを含むゲルビーズを一つ一つの細胞内に導入した。細胞内に導入したゲルビーズ表面のオリゴに細胞内のRNAをキャプチャさせたのち、逆転写、cDNA増幅しライブラリを作成した。 この作成したライブラリを次世代シークエンサーを用いてRNA-seq解析を行った。現在、下垂体TSH産生細胞、PRL産生細胞のクラスターを同定するため、得られたデータについて、主成分分析、t-distributed Stochastic Neighbor Embedding、K-meansクラスリングの手法を用いて解析を行っている。 また、マウスに対する甲状腺ホルモン補充量を決めるため、TRH欠損マウスを週齢により異なる量のL-T4を皮下に連日投与し、甲状腺ホルモンを維持し、正常甲状腺機能の条件を決定した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度に予定していた野生型マウス、TRH欠損マウス下垂体の次世代シークエンサーを用いてRNA-seq解析を行いデータの取得までは順調に終了したが、予定したn数までは完全には到達していない。現在、下垂体TSH産生細胞、PRL産生細胞のクラスターを同定するため、主成分分析、t-distributed Stochastic Neighbor Embedding、K-meansクラスリングなどの様々な手法を用いて解析を行っている。下垂体は様々な細胞の集合体であり、GHやPRL産生細胞はTSH産生細胞と比較的似ているため、クラスターの完全な同定にはまだ至っていないが、初年度の予定としてはおおむね順調に進展していると考えられる。
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Strategy for Future Research Activity |
TSH産生細胞とPRL産生細胞のクラスター同定をなるべく早期に得るため、必要があればn数を増加させて解析を行う。クラスターが同定できれば、それぞれのクラスター内におけるRNAシークエンスから得られた遺伝子発現量について、変動遺伝子解析、遺伝子オントロジー解析を行い、TRHのTSH産生細胞における変動する遺伝子群を網羅的に解析し、それぞれの細胞のホルモン合成に必要な遺伝子群を同定する。 その後、上記で確認できたTRH欠損マウスの遺伝子変化が、TRH欠損の直接的な影響か、甲状腺ホルモンの低下によるものかを検討するため、マウスに甲状腺ホルモンを補充しscRNA-seqを行う。さらにscATAC-seqを行うことで、変化した遺伝子群のクロマチン構造の凝集弛緩状態の変化を確認し、promoterやenhancer領域を決定していく。 さらに、視床下部室傍核特異的なものかを検討するため、視床下部室傍核特異的TRH欠損マウスのscRNA-seq解析を行い、下垂体におけるTRHや甲状腺ホルモンのTSH産生細胞への作用の分子機構や、中枢性甲状腺機能低下症における下垂体のTSH産生細胞の分子機構の解明を目指す。
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Causes of Carryover |
初年度予定していた個体数まで達しておらず、来年度も引き続き初年度予定の研究を継続する必要が生じたため、n数を増やしてシングルセルRNAシークエンスの実施のため今年度の使用額を次年度に使用予定である。
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