2023 Fiscal Year Research-status Report
女性がんにおけるエストロゲン応答性RNA結合ユビキチンリガーゼEfpの機能解明
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23K07996
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Research Institution | Saitama Medical University |
Principal Investigator |
佐藤 航 埼玉医科大学, 医学部, 助教 (10772783)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池田 和博 埼玉医科大学, 医学部, 准教授 (30343461)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | Efp / 女性がん / エストロゲン / RNA結合蛋白質 / 患者由来がんモデル |
Outline of Annual Research Achievements |
乳がん、卵巣がん、子宮体がんは代表的な女性のがんであり、女性ホルモンのエストロゲンは病態進行に関与する。エストロゲン受容体(ER)はホルモン依存性転写因子として、がん病態にも重要な標的遺伝子の転写制御を行っており、ER標的遺伝子の機能解明は女性がんの病態理解において重要であり、その学術的知見は実臨床への応用が期待される。本研究グループは独自に単離し機能解析を行ってきたエストロゲン応答RNA結合ユビキチンリガーゼ Efpが、細胞周期ブレーキの14-3-3σ蛋白質の分解を促進し乳がん増殖をもたらす作用を解明してきた。最近、RNA結合蛋白質としてのEfpの作用も注目されている。本グループは近年、ER陰性の子宮体がん・乳がんにおいてもEfpが細胞増殖を促進する作用を見出しており、Efpが女性がんにおいて多彩な作用を及ぼすことが想定される。本研究では女性がんにおけるEfpの標的因子を包括的に探索する目的で、RNA結合蛋白質としての機能に着目し、Efpを発現抑制したがん細胞サンプルを用いたRNAシークエンス発現解析からがん増悪化に関わるシグナル経路と候補遺伝子の絞り込みを行った上で、RNA免疫沈降法によりEfpに結合する転写物の同定を進め、さらに、大豆由来アスコルビン酸ペルオキシダーゼを改変したAPEX2遺伝子を用いた細胞内近接標識反応に基づき、Efp蛋白質と結合する分子を蛋白質およびRNAレベルで同定する。有望なEfp標的候補因子については、 患者由来がん細胞とその異種移植を活用した実臨床に近いがんモデルでの機能解析を進め、女性がん病態における臨床的意義については臨床検体を用いた病理組織学的解析により患者予後との相関性を検討して、Efpにより調節される新しい内分泌作用メカニズムを明らかにして、女性がん精密医療への応用を目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
令和5年度は研究代表者および研究分担者が連携して、RNA結合蛋白質としてEfpが結合するRNAの同定を患者由来がんモデルを含む女性がん細胞各種において解析を進め、細胞内近接標識反応を利用したスクリーニング法としては、大豆由来アスコルビン酸ペルオキシダーゼを改変したAPEX2遺伝子を組み込んだEfp発現ベクターを乳がん細胞に安定的に発現させ、ビオチン化標識されたEfp結合候補分子の探索を質量分析により包括的に行った。有望なEfp標的因子についてはがん臨床検体における免疫組織化学染色による病理学的解析を進めている。さらに、Efp(遺伝子名TRIM25)と同じRINGフィンガーモチーフを含むTRIM (tripartite motif)構造を有し、NF-kBシグナル活性化の観点からもEfpの類縁蛋白質であることを独自に明らかにしてきたTRIM47についても[Proc Natl Acad Sci U S A 118: e2100784118, 2021]、細胞内近接標識反応を利用した結合因子の同定を乳がん細胞において進めた。一方で、女性がんに対する分子標的治療の前臨床試験モデルの確立のため、卵巣がんの腹膜播種性転移検体から患者由来がん培養系を複数系統樹立することができ、難治女性がんの患者由来移植腫瘍系の作製に成功した。このin vivoがんモデルに基づき、卵巣がん高発現長鎖非コードRNAを標的とする核酸製剤を例として、そのナノドラッグデリバリーの有効性を検討した。
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Strategy for Future Research Activity |
Efp標的因子をRNAおよび蛋白質レベルから包括的に解析するため、研究代表者と研究分担者は連携しながらRNAシークエンスやRNA免疫沈降法、細胞内近接標識反応法を各種病型での患者由来培養系を含むがんモデルを使用して遂行し、Efpにより制御されるRNA発現制御および蛋白―蛋白間相互作用ネットワークをがん病態ごとに明らかにし、女性がん共通および各種がん特異的なEfpシグナルについて解析を進める。有望なEfp標的候補分子については、各種女性がん細胞において過剰発現系とノックダウン系を構築し、がん増悪化の作用メカニズムの解明を目指す。特に、患者由来がん培養系およびその移植腫瘍モデルについては、乳がん、子宮体がん、卵巣がんなどの各種女性がんにおいて確立しており、臨床部門との連携によりさらに症例数を増やして、前臨床試験に向けての研究基盤を整備していく。病理部門との連携により、Efp標的候補分子の診断・予後予測における臨床的意義について、腫瘍検体を用いた病理組織学的解析に基づき検討を進める。さらにEfp類縁因子のTRIM47についてもEfpと同様の機能解析を進める。以上の方策に基づき、女性がんの克服に寄与しうるEfpシグナルに基づく新しい診断・治療標的とそのメカニズム解明を進め、実臨床への応用を目指す。
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Causes of Carryover |
患者由来がん組織からの三次元スフェロイド培養法の条件検討が順調に進み、当初予定した培地や試薬、実験動物マウスに関わる消耗品経費を令和5年度は当初計画よりも少ない額で研究を遂行することができた。令和6年度は消耗品経費の余裕を生かして、症例数を増やして患者由来がん検体から三次元スフェロイド培養系の樹立およびその移植腫瘍系の確立を進め、機能解析をさらに推進する計画である。
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