2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞内代謝変化から探る糖尿病膵β細胞の病態解明と膵神経内分泌腫瘍への治療応用
Project/Area Number |
23K08001
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Research Institution | Hokkaido University |
Principal Investigator |
野本 博司 北海道大学, 大学病院, 助教 (50862330)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞内代謝 / 糖尿病 / 膵神経内分泌 |
Outline of Annual Research Achievements |
糖尿病の病態を理解するうえで、インスリンを分泌する膵β細胞の機能障害の機序を解明することは重要である。研究代表者らは糖尿病状態において、膵β細胞の細胞内エネルギー代謝が酸化的リン酸化から解糖系へとシフトする、細胞内代謝変化(代謝リモデリング)に着目した検討を行っている。この代謝変化には、膵島におけるHIF1αと解糖系酵素PFKFB3の発現亢進が密接に関与していることを明らかとしたが、このようなPFKFB3の発現亢進を介した細胞内代謝リモデリングが膵β細胞の機能や運命に及ぼす影響については、知見が不十分である。 研究代表者らは膵β細胞特異的にPFKFB3を発現する遺伝子改変マウスの作成やPFKFB3の発現亢進モデルを用いて、PFKFB3の活性化による耐糖能や膵β細胞の増殖・量への影響および糖尿病誘発刺激への応答変化を検討している。 一方で種々の癌腫においてPFKFB3が高発現し治療標的として検討されているが、膵β細胞等からなる膵神経内分泌腫瘍におけるPFKFB3発現の有無・程度や治療標的としての可能性は明らかではない。膵神経内分泌腫瘍切除検体やマウスへのインスリノーマ移植モデルを用いて、膵神経内分泌腫瘍におけるPFKFB3過剰発現の有無・程度の解明と治療標的としての可能性を探ることも目的とし、検討を実施している。ヒト病理検体におけるPFKFB3の発現程度には症例間で差が認められた。その一方で、げっ歯類膵β細胞株においては発現が認められ、これまで細胞増殖との関連が示唆されている。PFKFB3の発現抑制による細胞増殖への影響や、膵神経内分泌腫瘍への標準的治療薬との併用効果についてなどの検討を進めているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵神経内分泌腫瘍の検討においては、病理検体の免疫組織学的検討や遺伝子評価はおおむね解析ができている。更には膵β細胞株を用いた抗腫瘍薬やPFKFB3阻害を伴う事前検討や、免疫不全マウスモデルを用いた膵β細胞株の異種移植によるインスリノーマモデル動物の準備や予備検討は進んでおり、おおむね順調である。 一方で、膵β細胞特異的PFKFB3過剰発現モデルマウスの検討は、当初作成した遺伝子改変マウスにおいて膵β細胞におけるFlag-PFKFB3の過剰発現が確認されず、また一部の系統においては維持・繁殖が困難であり、目的とするマウスの作成が困難であった。そのため、予定した実験の一部を細胞株やその他モデルマウスを用いた実験系に置き換え進めてきた。
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Strategy for Future Research Activity |
膵神経内分泌腫瘍における検討は、上述のとおりおおむね予定通りに進行しており、現在の解析を引き続き進めていく。具体的には、細胞株を用いてPFKFB3の抑制が細胞増殖に及ぼす影響を明確化し、抗腫瘍薬との併用効果について解析する。更にはそれぞれの介入が細胞内シグナルに及ぼす分子メカニズムの影響への検証へと進めていく。インスリノーマ移植モデルマウスを用いた検討では、PFKFB3阻害薬の投与や抗腫瘍薬との併用治療が移植した腫瘍の腫瘍径に及ぼす影響や、血糖値に及ぼす影響などを検討する。 PFKFB3の過剰発現系については、モデルマウスの樹立が今回は困難であったため、学外機関との再相談を含め検討を進めていく。上述のとおり、モデルマウスに代わり、そのため、本年度はその他の外的要因により膵β細胞のPFKFB3発現を亢進させ、また一度発現が亢進したPFKFB3を抑制することが膵β細胞にどのような影響を及ぼすのかを検討してきた。引き続きモデルマウスの樹立の可能性を検討しつつ、並行して細胞株におけるPFKFB3の過剰発現系の作成も進めたい。
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