2023 Fiscal Year Research-status Report
Generation and characterization of anterior pituitary stem cells from human pluripotent stem cells
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23K08005
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Research Institution | Nagoya University |
Principal Investigator |
須賀 英隆 名古屋大学, 医学系研究科, 准教授 (20569818)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
井下 尚子 地方独立行政法人埼玉県立病院機構埼玉県立がんセンター(臨床腫瘍研究所), 臨床腫瘍研究所, 客員研究員 (20300741)
有馬 寛 名古屋大学, 医学系研究科, 教授 (50422770)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 下垂体幹細胞 / ヒト多能性幹細胞 / オルガノイド / 組織幹細胞 / 幹細胞ニッチ / 老化 / 病理標本 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究ではヒト下垂体前葉の幹細胞研究を行う。下垂体組織は再生能力が低く、一旦傷つくと回復は難しい。齧歯類を用いた研究では下垂体前葉の幹細胞について様々な視点から報告がなされるようになっている一方、ヒトでは生体から正常な下垂体組織を採取する難しさもあって、下垂体幹細胞の研究は進んでいない。そこでヒト多能性幹細胞(ES細胞・iPS細胞)を利用し、vitroでの分化技術と合わせることで、ヒト下垂体における幹細胞の存在に迫る。 ヒト下垂体前葉の幹細胞研究としてまず、ヒトES細胞、iPS細胞から下垂体幹細胞への分化誘導法を確立し、誘導した細胞が下垂体前葉の幹細胞として機能することを示す。幹細胞としての性質を証明したら次はこれをヒトモデルとして捉え、幹細胞維持の機序(ステムセルニッチ)や老化(ステムセルエイジング)を調べる。 具体的には以下のA、B、C、3点を実施する。項目A:ヒトES/iPS細胞から下垂体幹細胞を分化し選別可能にする。項目B:下垂体幹細胞のステムセルニッチを明らかにする。項目C:下垂体幹細胞エイジングの端緒を見出す。すなわち、項目Aで下垂体幹細胞を見出し、項目BおよびCではこれを利用して新たな知見を得る内容である。 2023年度は以下の研究を実施した。Aについて、ヒトES/iPS細胞から誘導した視床下部-下垂体オルガノイドで下垂体幹細胞群の存在確認を進め、また令和6年度の研究に備えてSox2::RFPノックインヒトiPS細胞株などを樹立した。Bについて、視床下部-下垂体オルガノイドの空間的トランスクリプトーム解析を開始し検討中である。Cについて、エイジングを検討するため、視床下部-下垂体オルガノイドを作成、令和7年度の研究サンプルとすべく長期培養を継続している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
項目Aについて以下の進捗を得た。既にヒト多能性幹細胞から視床下部-下垂体オルガノイドへの分化法を確立している。これをsingle cell RNA解析し、クラスター解析やバイオリンプロットなどを経て、下垂体組幹細胞マーカーとしてSOX2に加え、複数の候補を選出した。視床下部-下垂体オルガノイドの下垂体部分をこれらの因子で染色し、その細胞群の集蔟や周囲組織との関係を加味し、SOX2およびX、Y、Zの3候補を見出した(知財申請の可能性があるため因子名は伏せる)。次に、これらのlineageを追う目的でSox2::RFPノックインヒトiPS細胞株などマーカーをノックインしたヒトiPS細胞株を樹立した。現在、それぞれの細胞株を拡大培養してストックを増やしつつ、順に視床下部-下垂体オルガノイドへ分化させる作業を遂行中である。 項目Bについては以下の研究を進行中である。細胞-細胞間シグナルからみた幹細胞の制御機構の解析を目的に、視床下部-下垂体オルガノイドの空間的トランスクリプトーム解析を実施した。私たちの視床下部-下垂体オルガノイド分化法は、関連領域を丸ごと分化誘導するところに特長があり、従って下垂体の幹細胞を維持する機構もin vitroで再現されていると考え、これをモデルとした。項目Aにて検討中の下垂体幹細胞マーカーの選別と併せて解析を進め、情報を絞っていく。 前述の項目Cについては、令和7年度に用いる老化した視床下部-下垂体オルガノイドの準備を行った。加齢に伴って組織の機能低下や組織構造の変化を伴う老化が進行し、成体の恒常性が穏やかに変容していつか破綻する、その機序の一端を見出すのが目的である。私たちの視床下部-下垂体オルガノイドのモデルが900日を超えてin vitroで維持できる点をいかすため、今年度からオルガノイドを準備し、維持培養を継続している。
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Strategy for Future Research Activity |
項目Aについては以下を計画している。Sox2::RPFノックインヒトiPS細胞株あるいは幹細胞マーカー候補(X/Y/Z)の蛍光色素ノックインiPS細胞株を利用して、SOX2/X/Y/Z陽性細胞がなるべく多く長く維持発現される分化条件を最適化する。下垂体ホルモン産生細胞への最終分化を目的とした栄養因子や分化因子を培養プロトコールから取り除き、また既存の種々の幹細胞プロトコールを参考にして、SOX2/X/Y/Z発現残存率を高める。次に、EpCAM表面抗原陽性細胞を目印に下垂体前葉細胞を選別し(既に別件で確立した下垂体細胞選別方法である)、その中でRFPを目印にSOX2/X/Y/Z陽性細胞群を選別する。分取したEpCAM陽性(下垂体細胞)かつSOX2/X/Y/Z陽性(組織幹細胞)の細胞を立体培養し、幹細胞がもつ特徴としてsphereを形成するか検討、そして培養条件を最適化してsphereを多く得られる条件を見出す。さらに、このsphereが自己複製能(self-renewal)と多分化能(multi-potency)とを保持することを示し、組織幹細胞としての性質を持つことを証明する。 項目Bについては、引き続き視床下部-下垂体オルガノイドの空間的トランスクリプトーム解析を実施して下垂体幹細胞ニッチを制御する因子とその三次元構成を調べる。また、下垂体幹細胞sphereから分泌されるエクソソーム解析を行ってみる。組織幹細胞からは様々なエクソソームが分泌され、個体全体へ影響を及ぼしているとの報告が散見され、下垂体幹細胞も何らかの影響を周囲に及ぼしている可能性を探る。 項目Cについてはライフステージに伴う下垂体幹細胞システムの変遷と老化を本モデルで検討するべく、引き続いて視床下部-下垂体オルガノイドの継続的な培養を行う。
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Causes of Carryover |
研究分担者が実施する予定となっていた病理データの解析作業が令和5年度に発生しなかったため、令和5年度の分担額は翌年度に繰り越した。令和6年度にデータ解析作業を実施する。
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[Journal Article] Generation and purification of ACTH-secreting hPSC-derived pituitary cells for effective transplantation.2023
Author(s)
Taga S, Suga H, Nakano T, Kuwahara A, Inoshita N, Kodani Y, Nagasaki H, Sato Y, Tsumura Y, Sakakibara M, Soen M, Miwata T, Ozaki H, Kano M, Watari K, Ikeda A, Yamanaka M, Takahashi Y, Kitamoto S, Kawaguchi Y, Miyata T, Kobayashi T, Sugiyama M, Onoue T, Yasuda Y, Hagiwara D, Iwama S, Tomigahara Y, Kimura T, Arima H
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Journal Title
Stem Cell Reports
Volume: 18
Pages: 1657-1671
DOI
Peer Reviewed / Open Access
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