2023 Fiscal Year Research-status Report
Hippo pathway-independent regulation of lipolysis by MOB1
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23K08009
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Research Institution | Kobe University |
Principal Investigator |
西尾 美希 神戸大学, 医学研究科, 講師 (10467897)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肥満 / Hippo経路 / 脂肪分解 |
Outline of Annual Research Achievements |
肥満は、2型糖尿病・心血管疾患・癌などの原因となり、世界的に大きな医学的問題であることは周知の事実である。肥満の軽減やインスリン抵抗性改善のために脂肪分解を標的とする治療法が注目されているものの、脂肪分解を直接ターゲットにする治療法は、まだ臨床で使われていない。 これまでにHippo経路による脂肪制御機構としては、活性化TAZが転写因子PPARγの活性を抑制することで脂肪細胞分化を抑制すると説明されている。一方、マウスにおいて成熟した脂肪細胞におけるHippo経路分子の異常による表現型は一貫せず、その機構などまだ不明な点が多い。また、準備実験から高脂肪食を投与した野生型マウスの白色脂肪ではMOB1の発現増強を見るものの、これによるYAP/TAZの発現低下は見られず、逆にYAP/TAZの発現は亢進することから成熟脂肪細胞においては、MOB1はYAP/TAZと独立に制御されることが考えられた。そこで成熟脂肪細胞特異的にMOB1を欠損するマウスを作製したところ、高脂肪食による肥満に抵抗性になること、野生型マウスと食事摂取量、行動量に差はないものの酸素消費量は亢進していること、白色脂肪における脂肪分解活性が高く、これは上昇したPKA活性に依存すること、インスリン感受性が高く、炎症細胞浸潤が弱いこと、脂肪細胞のみならず肝細胞における脂肪の蓄積も低下することを見出した。このようなことから、MOB1は、脂肪分解を制御することで肥満やインスリン抵抗性を制御する機構であることを見出しつつある。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
MOB1による脂肪分解制御機構の解析のために、Adipoq-Creマウスを用いて、成熟脂肪細胞特異的なMOB1欠損するマウスを作製したところ、このマウスでは高脂肪食下において肥満抵抗性を示し、各脂肪組織および異所性の脂肪蓄積が低下していた。また野生型マウスと比較して高脂肪食摂取量、行動量に差はないものの酸素消費量は亢進していることを見出した。このマウスでは定常時の遊離グリセロールおよび遊離脂肪酸が増加していることから脂肪分解の亢進を見たため、脂肪分解に関わるPKAおよびATGL、HSLなどのリパーゼの活性化の有無を検討したところ、これらの活性化が肥満抵抗性の一因を担っていることが示唆された。現在はMOB1欠損によりPKAが活性化する機構についての解析も進めている。また、野生型とMOB1欠損各脂肪組織における、タンパク質レベルでのHippo経路構成分子やPPARγを含むin vivo脂肪細胞分化関連分子などの発現変化の検討や、マイクロアレイを用いたRNAレベルでの脂肪細胞分化、脂肪酸・TAG合成、脂肪分解、糖代謝、肥満に関連する遺伝子群変化、及びYAP/TAZの下流転写標的分子発現変化の検討も行った。 また、MOB1欠損による、脂肪細胞分化能変化の検討のため薬剤誘導性にMOB1を欠損できる脂肪細胞分化能を有する脂肪前駆細胞を樹立し、in vitroでも脂肪細胞分化誘導後のMOB1欠損により脂肪の蓄積が低下することも確認することができた。
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Strategy for Future Research Activity |
野生型とMOB1欠損脂肪組織におけるマイクロアレイの解析結果を参考に、MOB1欠損による脂肪分解亢進を引き起こすPKA活性化機構の詳細な解析を行うとともに、脂肪分解以外にも脂肪酸β酸化や脂肪酸合成能やトリグリセリド合成能の検討を行う。 また、現在みられている表現型のYAP/TAZ依存性の有無を検討する。
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