2023 Fiscal Year Research-status Report
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23K08014
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
松岡 孝昭 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (10379258)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
下 直樹 和歌山県立医科大学, 医学部, 助教 (10814064)
森田 修平 和歌山県立医科大学, 医学部, 講師 (50372868)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 糖毒性 |
Outline of Annual Research Achievements |
① 糖尿病群でのクロマチン構造の変化 正常血糖群と糖尿病群との間で、膵島open-chromatin領域内cis-elementの違いを比較したところ、膵β細胞機能や分化において重要であることが報告されているMafA, Pdx1, Nkx6.1, NeuroD1, Isl1などのコンセンサス配列数が糖尿病マウスにおいて低下していることが確認された。つまり、糖尿病状態はクロマチン構造を変化させ、上記転写因子のDNAへのアクセスを抑制している可能性が考えられた。同時に、糖尿病状態でコンセンサス配列数が低下している転写因子は、RNA-seqの結果から糖尿病において発現量が低下していることも確認しており、これによるクロマチン構造の変化が生じている可能性も考えられた。
② 糖毒性軽減によるクロマチン構造の変化 糖尿病群と糖毒性軽減群の2群間において、ATAC-seq解析上差のあったピーク内の転写因子結合配列を比較すると、Mafa, NeuroD1, Foxa2, Isl1等の転写因子結合モチーフが多数抽出された。つまり、これら膵β細胞機能に重要な転写因子がDNAにアクセスしやすくなっていることが判明した。また、これら転写因子結合モチーフは糖尿病状態のオープンクロマチン内における低下においても抽出されてはいたが、他転写因子、例えばPdx1やNkx6.1などと比べ、より糖毒性に鋭敏に反応し得ることも明らかとなった。これら結果から、糖尿病状態、特に高血糖毒性に鋭敏に反応する転写因子結合モチーフの網羅的抽出に成功したと考える。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初、糖尿病マウス膵島でのATAC-seqの遂行が困難であったが、様々工夫により解析成功にこぎつけた。
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Strategy for Future Research Activity |
① 膵島糖毒性感受性遺伝子内転写因子結合モチーフの抽出および機能解析 上記実験から得られた遺伝子発現量の変化とopen-chromatin領域の情報から、糖毒性感受性遺伝子の転写調節因子を同定する予定であるが、それら糖毒性感受性遺伝子の転写調節領域の範囲を設定し、各open-chromatin領域と遺伝子とのアノテーションの調節を行っているところである。同解析によって、糖毒性感受性遺伝子の責任転写因子の同定につながるものと思われる。新規転写因子の同定に成功すれば、同転写因子のknock down実験、 conditional knockoutマウス作製などを実施し、膵β細胞における重要性を確認する予定としている。
② open-chromatin領域の変化に着目した転写因子結合モチーフの抽出 糖尿病群において閉じており糖毒性軽減群で開いた遺伝子部位に注目し、同部位に数多く存在する転写因子結合モチーフを既に抽出できており、こちらの側面からも糖毒性に関与する転写因子の同定につなげていく予定としている。実際、open-chromatin領域の変化に注目してMafA遺伝子近傍を解析したところ、これまでにMafA遺伝子転写調節領域として既に報告されている遺伝子部分が糖毒性軽減に反応して開くことが判明した。これは同解析手法が、糖毒性感受性遺伝子の発現調節因子の同定法として妥当であることを示している。
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Causes of Carryover |
遺伝子改変マウスの作製費が次年度に持ち越しとなったため。
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