2023 Fiscal Year Research-status Report
脂肪幹細胞での肛門機能低下の新規予防法開発と人工肛門括約筋による肛門機能再生研究
Project/Area Number |
23K08050
|
Research Institution | Nagasaki University |
Principal Investigator |
富永 哲郎 長崎大学, 病院(医学系), 講師 (60457546)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
野中 隆 長崎大学, 病院(医学系), 准教授 (30606463)
中山 功一 佐賀大学, 医学部, 教授 (50420609)
朝重 耕一 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (70457547)
永安 武 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80284686)
松本 桂太郎 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 教授 (80404268)
高木 克典 長崎大学, 医歯薬学総合研究科(医学系), 客員研究員 (90635856)
町野 隆介 長崎大学, 病院(医学系), 助教 (90728081)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | バイオ3Dプリンター / 肛門括約筋 / 間葉系細胞 |
Outline of Annual Research Achievements |
大腸癌患者数の増加とともに、永久的人工肛門造設回避のため、放射線治療や外科的治療などの様々な肛門温存手術や周術期治療が開発されているが、肛門括約筋の喪失や肛門機能低下での便失禁を含む排便機能悪化を余儀なくされることがあり、これらの治療後に患者はQOLを大きく損なう。 一方で、再生医療分野において人工気管・食道の作製は研究段階であり、その多くがスキャフォールドという細胞を播種する足場が使用されている。我々はバイオ3Dプリンター”Regenova”によるスキャフォールドを用いない三次元構造体作成の研究を行い、人工気管・食道・尿管といった管腔臓器の作製、移植、生着に成功した。 我々は、この技術を応用することで機能的な肛門括約筋を作製し、移植による三次元臓器内での有用性を証明し、臨床応用への足がかりとしたく研究を進めている。 そのために、1.間葉系幹細胞から臓器特異的な細胞(平滑筋細胞)への分化を誘導し、これらの細胞の評価を行うことで、適切な細胞源を選定する。2.未分化あるいは分化誘導を促した間葉系幹細胞のスフェロイド(細胞集塊)の評価を行い、これらのスフェロイドを筋層内に注入移植することで、移植時適合の評価、間葉系細胞の臓器内での細胞分化や機能評価、放射線による影響を検証する。3.肛門括約筋欠損ラットモデルの作製を確立し、バイオ3Dプリンター用いた人工肛門括約筋を移植することで、2と同様の評価を行う。 令和5年はまず、ヒトの間葉系幹細胞として骨髄由来幹細胞と脂肪由来幹細胞を用いて、平面培養による平滑筋細胞への分化誘導を行い、分化効率や機能獲得などの違いを評価した。現在は、スフェロイド作製後に平滑筋細胞への分化誘導を行い、平面培養時と3D構造体での分化誘導で差を生じるかの評価を行っている段階である。また、今後は作製したスフェロイドを移植し、その評価を予定しているところである。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
研究がやや遅れている理由としては、まずCOVID-19の蔓延や戦争といった世界情勢の影響で、培養液や誘導培地に添加する成長因子等の必要物品の供給が安定しなかった点が挙げられる。これにより研究を縮小して継続せざるを得なかった。また、ラットは非常に小さいため括約筋の同定や欠損モデルの作製も困難を極め、ラット自体の供給が安定しなかったことも重なり、移植するまでに至らなかったこと、スケジュール調整が難しかったこと、予想以上に時間を要したことなども研究が遅れている原因として挙げられる。
|
Strategy for Future Research Activity |
これまで得られた結果に加え、継代タイミングや分化誘導法などを細かく検討し、さらなる効率化を図る。また、移植に関連する安定的な手術手技を獲得したのちは、計画に沿って研究を加速度的にすすめていく。
|