2023 Fiscal Year Research-status Report
腫瘍特異的に集積するDDSを用いた転移性癌の核酸治療
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23K08110
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Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
室谷 昌俊 大阪大学, 医学部附属病院, 医員 (30966560)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
奥崎 大介 大阪大学, 免疫学フロンティア研究センター, 特任准教授(常勤) (00346131)
山本 浩文 大阪大学, 大学院医学系研究科, 教授 (30322184)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 肝転移 / DDS / 肝障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
我々はこれまでに核酸医薬を腫瘍へ特異的に送達するドラッグデリバリーシステム (DDS:Drug Delivery System) であるsCA (super carbonate apatite)と,その進化型として肝毒性を大きく低減したiNaD(inorganic nanoparticle delivery)を開発し、大腸癌皮下腫瘍モデルでの有用性を報告してきた。本研究の目的は、マウス大腸癌転移モデルを用いて、これらのDDSの評価を行うとともに、転移性腫瘍への核酸薬の輸送能およびその抗腫瘍効果を評価することである。2023年度は、まず長鎖non-coding RNA (Lnc RNA)のノックダウンによって強力な細胞死誘導能をもつsiRNAをsCAまたはiNaDに50 microgram搭載し、脾注後11日目から35日目まで週に3回全11回マウスに静注して肝毒性を評価した。sCA群では投与した6匹中、脾注後17、24、25日目にそれぞれ1匹ずつ、31日目までに更に2匹のマウスの死亡が確認され、31日目には残り1匹も衰弱しており打ち切りとした。一方、iNaD群では5匹全てが観察期間の39日目まで健常であった。sCA-si-LncRNA投与群の肝臓は暗赤色に変色し肝不全が疑われ、顕微鏡像でも出血を伴う肝細胞のmassiveな壊死が広範に認められた。細胞死を検出するTunel 染色でもsCA群は多数のアポトーシス細胞がみられたが、iNaD群ではアポトーシス細胞はほとんど検出されなかった。大腸癌の肝転移モデルとしてKM12SMを脾注し、肝転移を作製する実験を3回行い、当初は細胞塞栓を起こしたり、脾臓からもれでて腹膜結節を作るなど不安定であったが、細胞サンプルの調整法や投与する細胞数を工夫し、摘脾も加えることで、安定して肝転移を作製することができるようになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
sCAを進化させたiNaDは細胞死誘導性の核酸医薬を搭載しても肝毒性がなく、治療剤のDDSとして有望であることが分かった。肝転移モデルマウスの作製も安定してできるようになった。
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Strategy for Future Research Activity |
肝転移株であるMC38やKM12SM, CT26に対して抗腫瘍効果を有する核酸医薬を開発する。MC38についてはすでに見出しているがKM12SM,CT26については既存の核酸医薬を試用したり、分子発現解析を通じて治療的核酸を同定する。各細胞株に効果のある核酸医薬を搭載し、肝転移モデル動物を作製して治療実験を進める。
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Causes of Carryover |
研究の進捗に伴い、次年度予定した計画にも着手することになったため。
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