2023 Fiscal Year Research-status Report
膵癌に対するがん治療用ウイルスを用いた革新的治療法の開発
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23K08172
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Research Institution | Tottori University |
Principal Investigator |
坂本 照尚 鳥取大学, 医学部, 准教授 (00642563)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 貴史 鳥取大学, 医学部, 教授 (70432911)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 膵癌 / ウイルス療法 / 免疫応答 |
Outline of Annual Research Achievements |
膵癌は5年生存率8%と極めて予後不良な癌腫で国内の死亡者数は増加しているにもかかわらず既存の化学療法は満足のいく成績でない。近年、免疫チェック阻害薬が癌薬物治療のキードラッグになりつつあるが、膵癌はPD-L1発現が低く、局所のリンパ球やネオアンチゲンが少ないため、免疫チェック阻害薬の効果は乏しく、治療成績の向上のためには新たな治療法の開発が急務である。ウイルス療法は“がん治療用ウイルス”によって癌細胞を直接破壊し、抗腫瘍免疫応答を賦活化させ抗腫瘍効果を誘導する新しい概念のがん治療法である。 そこで本研究では、がん治療用ウイルスFUVACを用いて免疫環境を免疫反応のないコールド腫瘍から免疫応答の活性化したホット腫瘍に変化させることで、免疫チェックポイント阻害薬抵抗性の膵癌に対する免疫チェックポイント阻害薬の有効性と新たな治療法の可能性を検証することに取り組み、本年度は以下の成果を得た。
K-rasやp53など様々な遺伝子変異を持つ7種類のヒト膵臓がん細胞株を用いて、ウイルスの腫瘍溶解作用を評価した。その結果、EC50に必要なウイルス量(MOI)に換算すると、AsPC1, AsPC1/CD44v9, MiaPaca2は約3、Panc1, Panc10.05は約0.1、BxPC3, SW1990は約0.01であった。又、全ての膵臓がん細胞において、FUVACは細胞融合能がない従来のウイルスと比べ高い細胞傷害作用が確認され、細胞融合による強力な腫瘍溶解作用を有することを示した。一方、ヒト膵臓がん細胞株に対してマウス膵臓がんPan02細胞株ではFUVACの感受性が低く、EC50は10以上であった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
膵癌細胞に対するがん治療用ウイルスによる腫瘍溶解効果を評価した結果、ヒト膵臓がん細胞株に対してマウス膵臓がんPan02細胞株ではFUVACの感受性が低いことが判明した。そこで他のマウス膵臓がん細胞に対してFUVACの感受性を評価する研究項目を新たに追加したため。
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Strategy for Future Research Activity |
Pan02細胞に加え、ヒト膵臓がん細胞に対するFUVACの感受性と同等もしくは近いマウス膵臓がん細胞を用いた両側皮下腫瘍モデルにおいて、ウイルス単独、抗PD-1抗体単独、ウイルス+抗PD-1抗体併用による抗腫瘍効果を評価・解析する。
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Causes of Carryover |
本年度の結果より、当初計画していた動物実験を次年度からの開始に変更した。それゆえ当該年度に使用予定であった研究費を、次年度の動物実験のための費用に充てる。
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