2023 Fiscal Year Research-status Report
ステントグラフト末端の術後新規エントリー発症機序解明のための流体・構造力学的解析
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23K08260
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Research Institution | Jichi Medical University |
Principal Investigator |
岡村 誉 自治医科大学, 医学部, 准教授 (70438646)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中村 匡徳 名古屋工業大学, 工学(系)研究科(研究院), 教授 (20448046)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | ステントグラフト |
Outline of Annual Research Achievements |
大動脈のステントグラフト治療後、ステント末端に新たな大動脈解離(distal SINE)が高頻度に発症する.このdistal SINEは再治療・突然死の原因として問題になっている.しかしdistal SINEの詳しい発症機序はまだ不明である.申請者は大血管術後のdistal SINE発症率や予防法について報告し,その研究過程で,distal SINEの発症原因は異常な血流や血管壁変形がもたらす機械的ストレスであると着想した. 本研究では、大血管術後の患者のステント末端部の血管壁に作用する機械的ストレスを数値流体計算および構造力学計算の2つから定量するとともに、MRIによって血流量・血流方向を測定し、血流的視点から術後distal SINE発症の機序を明らかにする.本研究によって、大動脈ステントグラフト治療の重大な合併症の一つであるdistal SINEの機序が明らかになり、予防法の確立および治療成績改善への臨床応用に展開することが期待される. Distal SINEはFET末端に発症することから、血流によるwall shear stress(WSS:壁をこする力)が原因の1つと推測される.FET使用直後の患者CTデータから血管内腔形状の抽出・血流シミュレーションを行い、ステント末端における振動せん断指数(1心周期の間にWSSが血管壁上を振動する度合い)が上昇していることを突き止めた.またステント径を細くすることでwall shear stressが上昇することも発見した.
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
硬いFETと柔らかい大動脈の移行部で生じている高い伸長ひずみが、FETの留置位置やFET径と大動脈径の関係(サイジング)、によってどのように変化するかを構造力学的視点から評価し、振動せん断指数とwall shear stressを確認することができた.
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Strategy for Future Research Activity |
FET使用直後はFETが下行大動脈と平行に留置されていたのが、遠隔期にFETの形態がよりストレートに変化することが頻回に認められる(図6).機械的ストレスの上昇の原因になっていると推測され、FETと大動脈壁の角度の変化がWSS、振動せん断指数、血流方向および伸長ひずみを上昇させるかどうかを調べる. また、Phase contrast MRIを用いることで任意の断面における血流動態の数値化が可能で、3つのレベルにおいて血流量と血流方向を定量化する.また、4D-MRIは撮影された実測の血流速度を可視化する方法で、1つの断面ではなく全体の血流量の定量および流線図の視覚的評価が可能となる.局所の高い血流量や血流方向が血管壁への機械的ストレスを上昇させdistal SINEの原因となりうるかを解析する.
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Causes of Carryover |
コロナウイルス感染症の影響で研究が遅延したため. 今後複数のFET使用直後の患者CTデータから血管内腔形状の抽出・血流シミュレーションを行い、FETの留置形状やサイズ等によってステント末端における振動せん断指数、wall shear stress、等がどのように変化するかを調べる.またPhase contrast MRIの血流動態の数値との関連も調べていく.
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