2023 Fiscal Year Research-status Report
制御性T細胞の低温・高温応答からみた脳低温による炎症反応制御と脳保護作用機序
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23K08396
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Research Institution | Nippon Bunri University |
Principal Investigator |
松井 智浩 日本文理大学, 保健医療学部, 教授 (50314828)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 脳微小血管内皮細胞 / JAM-A蛋白 / TNF-α / IL-17 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は、脳低温による脳保護作用機序に、制御性T細胞(regulatory T cells:Treg)由来因子による炎症反応制御がどのように関わるのかを明らかにするものである。そのためにまずは、TNF-αやIL-17による脳障害増悪機序を調べる必要がある。そこで本年度は、白血球の血管外遊走に関与する脳微小血管内皮細胞の膜蛋白に、TNF-αやIL-17が及ぼす影響を調べた。その結果、両サイトカインは、PECAM-1蛋白発現には作用しなかったが、JAM-A蛋白発現をそれぞれ濃度依存的に増加させた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
今年度は、所属変更に伴う研究機器・試薬等の移動およびセットアップに多くの時間が割かれた。よって、研究は遅れていると評価せざるを得ない。
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Strategy for Future Research Activity |
報告者は今までに、脳低温療法による脳保護作用機序をミクログリアや炎症性T細胞といった炎症を惹起する細胞に着目し研究を行い、脳低温下では脳損傷早期におけるミクログリアのニューロン傷害性因子産生低下に基づくニューロン死抑制効果のみでなく、炎症性T細胞のニューロン傷害性因子産生も低下し、遅発性にもニューロン死抑制効果がもたらされる機序を示してきた。一方、T細胞には過剰な免疫応答を抑制する制御性T細胞(regulatory T cells:Treg)が存在するが、この細胞が本療法の脳保護作用にどのように関わっているのかは不明である。Tregは炎症抑制性の細胞であるため、低温・高温下で受ける影響はミクログリアや炎症性T細胞とは全く異なる可能性がある。つまり脳低温療法はTregの活性化を介して脳保護効果を示し、反対に脳高温はTreg機能を抑制して脳障害増悪に繋がることが考えられる。そこで本研究では、Tregの低温・高温応答を末梢性と脳内浸潤性で調べ、脳低温療法による脳保護作用機序をTregのもつ炎症抑制性機能の面から解明する。
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Causes of Carryover |
(理由)所属変更に伴う研究機器・試薬等の移動およびセットアップに多くの時間が割かれ、その間、実験が全くできなかったため。 (使用計画)Tregの低温・高温応答を、まずは、以下のように末梢性で調べ、脳低温療法による脳保護作用機序をTregのもつ炎症抑制性機能の面から解明する。 ①脳障害後の炎症性T細胞活性化は末梢性にも認められるため、末梢-浸潤炎症性T細胞が脳障害の治療ターゲットになる。一方、末梢性Tregはその治療の予後良好因子として働く可能性があるため、まずは末梢血Tregに低温・高温が及ぼす影響を、産生される抑制性サイトカイン(IL-10、TGF-β)や細胞傷害性因子(Pfn、GrB)をみることで評価する(in vitro)。 ②研究①により、低温下で高値、高温下で低値となる温度依存性変化を示す因子がみられた場合、それらの病態生理学的意義を、ミクログリアや炎症性T細胞機能に対する抑制効果と細胞死(アポトーシスやネクローシス)で評価する。
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