2023 Fiscal Year Research-status Report
神経障害性疼痛におけるスフィンゴ脂質の質的量的変化の役割の解明
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23K08402
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
伊藤 伸子 東京大学, 医学部附属病院, 講師 (80332609)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
星野 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 助教 (80920503)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 脂質 / 神経障害性疼痛 |
Outline of Annual Research Achievements |
慢性神経障害性疼痛の病態形成に対し、スフィンゴシン一リン酸(S1P)やその産生経路にあるスフィンゴ脂質がどのように関与するのか解明する。スフィンゴ脂質は、細胞を構成する多機能性脂質であり、生体の恒常性に寄与することが知られている。中でもS1Pは、多発性硬化症に代表される免疫疾患の髄液中に高濃度で検出され、神経系への作用が推測される。慢性疼痛モデルの髄液や血液中でスフィンゴ脂質が質的量的にどのように変化し、S1Pシグナル伝達系に発現する産生代謝酵素、トランスポーターや受容体が、病態のどの時期にどのような変化をもたらすのか解明する。さらにS1P受容体拮抗薬による疼痛緩和メカニズムを解明する。 当該年度は2つの腰部脊柱管動物モデル髄液におけるスフィンゴ脂質測定の解析を行った。馬尾神経圧迫型の腰部脊柱管狭窄症モデルにおいて、day7にてS1Pの有意な上昇と、S1Pの前駆物質であるSphingosineの低下、さらにSphingosineの前駆体脂質であるCeramideの有意な増加が認められた。神経根圧迫型の腰部脊柱管狭窄症症モデルでは、S1Pの上昇を認めたが有意ではなかった。馬尾神経圧迫型と同様に髄液中Ceramideの有意な上昇が認められた。Sphingosineリン酸化酵素1,2について遺伝子解析を行ったところ、馬尾神経圧迫型の腰部脊柱管狭窄症モデル圧迫部位の脊髄において、Sphingosineリン酸化酵素1,2の有意な発現増加が認められた。これらの結果から、腰部脊柱管狭窄症において、スフィンゴ脂質の代謝が活性化され、疼痛や運動機能に関与している可能性が示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
脊柱管狭窄症モデル動物神経組織タンパク解析のためのウエスタンブロット解析機器Wesの故障があり、修理メンテナンスのために時間を要したことで、実際の解析に遅れを生じている。
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Strategy for Future Research Activity |
疼痛に関与するスフィンゴ脂質最有力分子と思われるS1PとCeramideの産生経路は多岐に渡り、多くの代謝産生酵素が関与していることから、これらの代謝酵素の脊柱管狭窄症モデルでの発現について網羅的に解析を進める。2つの脊柱管狭窄症モデル(馬尾神経圧迫型と神経根圧迫型)について、馬尾神経型は圧迫脊髄部位、神経根圧迫型は圧迫後根神経節部位について、解析を進める。タンパク質ならびに遺伝子発現上昇が認められた酵素から、疼痛メカニズムに関与するスフィンゴ脂質代謝系が同定できることが予想され、新たな疼痛治療のターゲット分子を見出していく。中間報告として、国内国外の学会で研究成果を発表を行い、他の研究者からの助言や意見を参考に進めていく。予算に余裕があれば、RNAシークエンス解析を用いた新規ターゲットの探索を行っていく。
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Causes of Carryover |
モデル動物サンプルでのスフィンゴ脂質代謝酵素タンパク質解析のためのウエスタンブロット解析機器Wesが故障し、修理に時間を要した。機器の使用確認後に解析のための各種抗体を購入し、解析を進めていく予定である。
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