2023 Fiscal Year Research-status Report
Glymphatic pathway障害の面から見たくも膜下出血の病態解明および新規治療法の開発
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23K08499
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
岡 史朗 山口大学, 医学部附属病院, 講師 (20420531)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | glymphatic pathway / subarachnoid hemorrhage |
Outline of Annual Research Achievements |
実際のくも膜下出血の患者さんにおいて、glymphatic pathwayの障害を認めるのかどうかをMRIを用いて検討した。MRIの撮影方法はdiffusion tensor image analysis along the perivascular space (DTI-ALPS)法というもので、これは無侵襲にglymphatic pathwayを評価するものである。拡散テンソル画像を用いて、放線冠レベルにおける血管周囲腔に平行な方向への水分子の拡散能を評価しており、glymphatic pathwayの機能を反映しているとされる。今回我々はくも膜下出血発症後3週の患者さんにDTI-ALPSを施行した。その結果後遺症を残さず退院した患者に比べ、続発性水頭症をきたした患者や、認知症や遷延性意識障害をきたした患者では有意にAPLS indexが低下していた。このことはくも膜下出血後に生じる水頭症や認知症、遷延性意識障害にglymphatic pathwayの機能障害が関与することを示唆する所見である。特発性正常圧水頭症患者におけるglymphatic pathwayの機能障害は報告があるが、くも膜下出血後の水頭症との関連は今まで報告はなく、初めての知見である。また認知症についてもアルツハイマー型認知症にglymphatic pathwayの機能障害が関与することは報告があるが、くも膜下出血との関連では今までにないものである。これまでくも膜下出血におけるglymphatic pathway障害は基礎研究レベルでの報告であり、実際のくも膜下出血患者にglymphatic pathway障害があることを示したのは世界で初めてのことである。今後くも膜下出血患者に対する新たな治療法を開発する上で非常に重要な発見である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
臨床研究は着実に症例を重ね結果が出たが、基礎研究はマンパワーが不足しておりやや遅滞している。
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Strategy for Future Research Activity |
くも膜下出血患者においてMRIにより無侵襲にglymphatic pathwayが評価可能であることが明らかとなったため、glymphatic pathwayの障害をきたすリスクファクターを調査する。リスクファクターが明らかとなれば治療介入方法について検討していく。基礎実験は実験環境は整備できているため、今後遅滞なく進めていく。
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Causes of Carryover |
基礎実験が遅滞したため、その分支出が予定より少なかった。遅滞なく研究を進め予定通り使用する。
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