2023 Fiscal Year Research-status Report
マルチオミクス解析を駆使した髄膜腫悪性化機序の解明
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23K08531
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
江口 盛一郎 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (80648650)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
財津 桂 近畿大学, 生物理工学部, 教授 (30700546)
井口 亮 国立研究開発法人産業技術総合研究所, 地質調査総合センター, 主任研究員 (50547502)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 異型性髄膜腫 / 分子生物学的分類 / トランスクリプトーム / メタボローム |
Outline of Annual Research Achievements |
我々自身が行った先行研究において、少数の検体を対象とした解析ではあったが、異型性髄膜腫には分子生物学的特徴の異なる腫瘍が混在することが明らかになっている。これをもとに、初年度の2023年度は、異型性髄膜腫の腫瘍検体対象にマルチオミクス解析を行い、分子生物(遺伝)学的特徴から腫瘍の分類を行うことを目標とした。 まず、凍結保存されている腫瘍検体100検体を対象に、発生生物学的、臨床学的特徴による分類を行い、各群間で生物学的悪性度(予後)に差が認められるか比較を行った。具体的には、腫瘍検体を腫瘍の部位、付着部硬膜の発生由来(Neural crest cellかMesoderm cellか)、初発か再発か、増殖能(Ki-67の数値)予後(摘出術後の再発・再増大の有無)、により2群に分類した。腫瘍の部位(非頭蓋底)・付着部硬膜の発生由来(Neural crest cell由来)は腫瘍の増殖能が高く、悪性度が高い(予後不良)という仮説を立てて解析を行った。結果、頭蓋底と非頭蓋底、Neural crest cell由来かMesodermal cell由来かの間で増殖能及び生物学的悪性度(予後)には有意差は認められなかった。また、初発と再発腫瘍の間でも同様に有意差は認められなかった。 費用の問題もあり、全100検体に対してマルチオミクス解析を行うことはできないため、上記の結果を根拠として、解析対象とする腫瘍検体をランダムに50検体を抽出した。抽出した検体に対してトランスクリプトーム解析のためのRNA抽出を行ったが、一部の検体から解析に必要なRNA量を抽出できなかったため、再抽出操作が必要となり、現在進めている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
トランスクリプトーム解析を行うため、RNAの抽出を行ったが、一部の検体で解析に必要なRNA量が不足していたため抽出作業のやり直しが必要になった。元々本研究の対象とする全検体のRNA抽出が終了した時点で一括してトランスクリプトーム解析を行う予定であったため、解析を開始できていない。また、トランスクリプトーム解析を行った同一検体に対してメタボローム解析を行う計画であるため、メタボローム解析も同様に開始できていない。このため、当初の研究計画よりもやや遅れていると判断する。
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Strategy for Future Research Activity |
トランスクリプトーム解析に必要なRNA量が抽出できなかった理由として、検体の保管状況に原因があると考えた。冷凍保存期間が長いものの方が抽出量が少なくなる傾向にあったが、検体採取時の状況にも依存する。現在、RNA抽出をやり直しているが、十分なRNA量が抽出できない場合には解析対象とする検体を変更する、ないしは専門の業者に抽出操作から外部委託することを検討している。また、メタボローム解析を先行して進める、最終的に両解析の結果が得られた検体のみを統計解析の対象とすることを考えている。
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Causes of Carryover |
2023年度に施行予定であったトランスクリプトーム解析を行えなかったため(前段階として、解析に必要なRNA量の抽出が不十分な検体があったため)、解析にかかる経費を使用しなかった。また、同じくメタボローム解析もトランスクリプトーム解析の遅れで行えておらず、こちらの解析に必要な経費も使用していない。分担研究者はこれらの解析データを用いてベイズ統計モデリングに基づく解析を行う予定であったため、本分担研究者が使用する予定であった経費も使用していない。以上により2023年度に請求した助成金との間に差額が生じている。これらの解析は2024年度に実施予定であるため、2023年度の差額は2024年度に上記解析の経費として使用予定である。また、2024年度に請求した助成金は、本来の計画通り腫瘍細胞の不均一性の評価目的で行うsingle cell RNAseqに使用する予定である。
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