2023 Fiscal Year Research-status Report
去勢抵抗性前立腺がんにおけるストマチン-PDPK1抑制系による新たな抗腫瘍作用機構
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23K08732
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Research Institution | Shiga University of Medical Science |
Principal Investigator |
扇田 久和 滋賀医科大学, 医学部, 教授 (50379236)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 前立腺がん / ストマチン / EphA / MAPキナーゼ / ELK |
Outline of Annual Research Achievements |
腫瘍抑制因子ストマチンの発現調節機構を明らかにすることができた。具体的には、前立腺がん細胞同士が接触していると、隣接するがん細胞の表面に発現しているEphA受容体とephrin-Aリガンド間で相互作用が生じ、ストマチンの発現は抑制されていた。一方、間質細胞などががん細胞間に入り込み、EphAとephrin-Aとの相互作用を切断するとストマチンの発現は増加した。 EphAとephrin-A間の相互作用でストマチンの発現が抑制される分子メカニズム以下の通りであった。EphAはephrin-Aと結合することにより、EphAの細胞内領域のチロシンリン酸化が起こりEphAが活性化すると、細胞質に存在するMAPキナーゼの活性化は抑制された。MAPキナーゼはその下流で転写因子ELKをリン酸化して活性化することが知られている。活性化したELKは核内に移行し、ストマチン遺伝子の転写調節領域に結合してストマチン遺伝子発現を増加させる。したがって、EphA活性化によりMAPキナーゼが抑制されるとストマチンの発現も抑制され、逆に、EphAが不活性化するとMAPキナーゼが活性化しストマチンの発現も増加した。 さらに、ヒト前立腺がんサンプルを用いて免疫組織染色をすると、Gleasonスコアが高く悪性度の高い前立腺がんではEphAのリン酸化は亢進し、ストマチンの発現は抑制されていた。逆に、Gleasonスコアが比較的低い前立腺がんでは、EphAのリン酸化はほとんど見られず、MAPキナーゼとELKのリン酸化は亢進しており、ストマチンの発現も増加していた。 以上の結果をもとに、前立腺がん患者でストマチンの発現を促進させる手法を見出すことができれば、新規前立腺がん治療開発につながる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
本研究の目的としているストマチンの発現機構の全容を解明しつつあるから。さらに、ヒト前立腺がんサンプルを用いた解析も進めており、新規治療開発の基盤となる知見も得られているから。
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Strategy for Future Research Activity |
申請書に記載した研究計画に沿って、より強力な腫瘍抑制作用を有するストマチンCA変異体の作用機構、ストマチンの下流で作用する分子PDPK1をターゲットとした前立腺がん抑制方法について研究を進めていく。これらの研究によって得られた知見を活用し、特に、去勢抵抗性で高悪性度の前立腺がんに対する治療法の開発を目指す。
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Causes of Carryover |
当該年度の研究では比較的費用のかからない細胞実験を中心に実施し、効率よく良好な結果を得ることができた。次年度以降は、高額な費用を必要とする動物実験などを計画しており、その研究に合わせて研究費を使用する予定である。
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