2023 Fiscal Year Research-status Report
人工知能による卵巣機能の評価アルゴリズムの確立と寄与因子の卵巣機能への作用の解明
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23K08816
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
浦田 陽子 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (20572598)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 細胞老化 / 生殖補助医療 / シクロホスファミド / 原発性卵巣不全 / Ferti-QoL |
Outline of Annual Research Achievements |
・細胞老化と原発性卵巣不全(POI) 抗がん剤であるシクロホスファミド(Cy)の投与が卵巣機能を低下させることは知られている。老化細胞は細胞増殖能を失い、炎症物質などを分泌することで様々な病態に関与している。Cy投与によるPOIモデルマウスでは、卵巣顆粒膜細胞で細胞老化マーカー(p16, p21, p53, γH2AX)が増加していた。ヒト顆粒膜細胞培養おいて、Cy投与はp16, p21, p53, γH2AXが増加した。細胞老化作用薬であるダサチニブとケルセチン(DQ)の投与は、POIモデルマウスとヒト顆粒膜細胞培養においてこれらの細胞老化マーカーを低下させた。POIマウスにDQを投与すると、排卵が誘導され、妊孕能が改善した。DQはCyによるPOIに有効である可能性が示された。 ・生活習慣やストレスは生殖補助医療(ART)結果と関連がある 地中海型食事パターンや睡眠習慣といったライフスタイルがART結果と関連している。われわれは食事習慣、ライフスタイル、生殖医療特異的QOLスコア(Ferti-QoL)を包括的に検討し、どの因子がART結果と関連しているかを調べた。初めてART治療を受ける291人の女性を対象に前向きに調査し、質問票の結果と、ART治療結果との関連性を調査した。 採卵あたりの良質胚盤胞率は、頻繁の魚の摂取と低い傾向にあった。臨床妊娠率は、オリーブオイルの頻繁な摂取とコンピュータの長時間使用と有意に高い関連があり、FertiQoL Total scaled treatment score高値で高い傾向にあった。妊娠反応陽性は、コンピュータの長時間使用で有意な肯定的な関連をうけ、喫煙しているパートナーによって否定的な関連がある傾向だった。以上より、オリーブオイルは食事習慣の中でも重要な因子であり、QOLとパートナーの禁煙支援は不妊カップルには重要かもしれない。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
すでに卵巣機能(採卵数、成熟卵率、受精率、良好胚率)を評価するツールを作成目的で、生殖補助医療を実施した患者のデータセットは得られている。データセットには、患者背景(年齢、妊娠出産回数、月経周期、BMI、喫煙歴、手術歴、婦人科疾患既往歴、夫年齢、運動精子数)と採血データ(ホルモン基礎値、抗ミュラー管ホルモン、終末糖化産物、Diacron reactive oxygen metabolites、Biological antioxidant potential、Growth differentiation factor 9)、Bone morphogenetic protein 15)が含まれている。
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Strategy for Future Research Activity |
患者のデータセット(患者背景、採血結果)をもとに、卵巣機能(採卵数、成熟卵率、受精率、良好胚率)を評価するツールを人工知能で作成中である。 その結果を踏まえて、卵巣機能に寄与する因子について解明をすすめる。
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Causes of Carryover |
現在評価するツールを人工知能で作成中であり、予定よりも細胞やマウスを用いた基礎実験を行っていないため。
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