2023 Fiscal Year Research-status Report
HPVインテグレーションサイトに注目した子宮頸癌個別化療法の確立
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23K08839
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Research Institution | The University of Tokyo |
Principal Investigator |
田口 歩 東京大学, 医学部附属病院, 届出研究員 (60756782)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | HPV / インテグレーション / トランスクリプトーム |
Outline of Annual Research Achievements |
まず、HPV関連子宮頸癌20症例を対象に、RNAseqとCAGEを実施した。HPVタイプの内訳はHPV16型が10例、HPV18型が7例であった。その他は52型、58型、45型がそれぞれ1例ずつであった。まず、RNAseqデータを基に、HPV由来の発現パターンを確認したところ、HPV16型は10例中8例でHPV16型由来トランスクリプトームの発現を確認でき、8例中5例は、がん遺伝子であるE6/E7領域を中心とした発現パターン(パターンA)を示し、残りの3例は、E6/E7の発現に加えて、E2やE4領域の発現も確認できた(パターンB)。HPVは癌化の過程でヒトゲノムへのインテグレーションを来すことが知られているため、ヒトーHPVキメラRNAを検出することでHPVインテグレーションの確認を行った。その結果、HPV遺伝子発現パターンはHPVインテグレーションと関連があり、パターンAでは全例キメラRNAが検出できたのに対して、パターンBでは全例キメラRNAは検出されなかった。次にCAGEより得られたデータをもとに、HPV遺伝子の転写開始点を評価した。その結果、RNAseqでパターンBを示した1例以外は全てTP97の初期プロモーター活性のみを認めることが明らかになった。後期プロモーターの活性を認めた1例では初期プロモーターの活性が抑制され、E6/E7の発現も抑制されていることがわかった。このことから、子宮頸癌検体においてもHPVゲノムのプロモーター調整機構が維持されている症例があることが明らかになった。一方、HPV18型陽性症例については、全例でパターンAのHPV由来遺伝子発現パターンを呈した。また、全例でキメラRNAが検出され、HPV16型と比べて高頻度でHPVインテグレーションが起こっていることが示唆された。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
1: Research has progressed more than it was originally planned.
Reason
HPVインテグレーションサイトにおける転写活性化の影響を調べるため、RNAシークエンスとCAGEを用いてHPVインテグレーションを同定することに成功しいる。
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Strategy for Future Research Activity |
R6年度は、R5年度に解析したデータをもとに、まず、ヒトーHPVキメラRNAの構造を明らかにし、ヒト―HPVキメラRNAの転写開始点がどのように調整されているかを検討する。具体的には、転写開始点がヒト遺伝子にあるかHPV遺伝子にあるかを明らかにし、どちら由来のプロモーターを使用しているかを検討する。さらに、HPVインテグレーションサイト周辺のヒト遺伝子発現変化を評価する。ヒト遺伝子発現評価方法として、RNAseqデータを用いた遺伝子単位での発現量の定量化を行うとともに、CAGEピークをもとにした転写活性化評価を行う。 さらに、子宮頸癌データベースの拡充を行うため、100例の頸癌データベースを作成し、100例について、HPV由来遺伝子発現の評価を行い、HPVインテグレーションがHPVインテグレーションサイト付近のヒト遺伝子活性化に与える影響を明らかにする。
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Causes of Carryover |
概ね計画通り執行できた。一部の試薬購入を繰り越した。
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