2023 Fiscal Year Research-status Report
卵細胞質機能低下に起因する妊孕性低下の治療法の開発に向けた基礎的検討
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23K08842
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Research Institution | University of Yamanashi |
Principal Investigator |
深澤 宏子 山梨大学, 大学院総合研究部, 講師 (60362068)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 修司 山梨大学, 大学院総合研究部, 医学研究員 (00228785)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 卵細胞内 ATP 局在 / ミトコンドリア分布 |
Outline of Annual Research Achievements |
MII 卵細胞内のミトコンドリアの分布と ATP 産生部位の発生能との関わりを明らかにする目的で、まず、卵細胞内の ATP 産生部位を蛍光観察する方法の構築に着手した。 卵細胞内のミトコンドリアの活性を、細胞内あるいはミトコンドリア内の ATP の局在を観察することで解析する系を確立するために、ATP にリガンドとして結合する蛍光タンパク (MaLion R と MaLion G) をコードした mRNA を合成した。具体的には、ミトコンドリア移行シグナルを N 末端につけた MaLion G をコードする mRNA を合成するための、in vitro transcription vector の作成から開始した。また、MaLion R をコードする mRNA 合成用の vector の作成も行なった。この vector の作成に時間を要したが、目的とする mRNA が合成できた。8 ~ 10 週齢の B6D2F1 メスマウスを過排卵処理して MII 卵を採取し、卵細胞内に上記 mRNA をマイクロピペットを用いて顕微注入してタンパクを発現させ、共焦点レーザー顕微鏡で観察した。注入する mRNA の濃度が低いと観察に適さず、高すぎると、顕微注入により卵細胞の生存率が下がること、注入した mRNA からタンパクが作られ、観察に適するまでに要する時間は最低でも2、3時間は必要であることなどが明らかとなった。ミトコンドリ移行シグナルをつけた mRNA (Malion G) を注入した卵子では、ミトコンドリアに一致して蛍光が、MaLion R をコードする mRNA を注入した卵子では細胞質に均一に蛍光が確認できたため、目的通りの観察が可能と判断した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
細胞内の ATP 局在とミトコンドリア内の ATP 局在を分けて観察をするためにそれぞれ別の mRNA を合成する必要があり、その in vitro transcription vector の作成に時間を要した。2種類作成したが、別の蛍光色素を使ったものも必要となるため、現在その vector の作成を試みている。先行して作成した vector で合成した mRNA を用いた実験系は確立できたため、前述した検討は開始している。
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Strategy for Future Research Activity |
卵細胞内の ATP 産生部位を蛍光観察する方法は確立できたため、卵子の活性化に伴い卵細胞質内での ATP 産生部位やミトコンドリア内での ATP 産生がどのように変化するかを検討する。また、われわれのこれまでの検討で、採卵から 24 時間経過した in vitro aged 卵は 2 細胞以上には発生しないことがわかっており、将来の臨床応用を見据えて加齢卵のモデルとして、この in vitro aged 卵における細胞内、ミトコンドリア内の ATP 産生を観察する。高齢マウスから得た MII 卵における ATP 産生の変化も観察することを検討している。
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Causes of Carryover |
MaLion R とMaLion G をコードする mRNA を合成するためのベクターを 2 種類作成したが、この作成に予想外に時間がかかり、実験を進めることがなかなか出来なかったため、次年度使用額が生じた。ベクターが作成でき、mRNA 合成が可能になったことから、mRNA の至適濃度や観察時間の検討の結果、卵細胞内の ATP 産生部位を蛍光観察する方法が確立できており、遅れて開始した実験を速やかに進めるためにもともと購入予定であったマウスの購入や飼育費用が次年度に必要となる。また、別の蛍光色素の mRNA が必要となったため、新たな mRNA 合成用のベクターを作成する必要がありその費用も必要と考えている。
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