2023 Fiscal Year Research-status Report
細胞内脂肪滴蓄積を標的とした子宮頸癌の新たな予後予測と治療戦略
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23K08853
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Research Institution | Wakayama Medical University |
Principal Investigator |
西岡 香穂 和歌山県立医科大学, 医学部, 学内助教 (40866787)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
西辻 和親 和歌山県立医科大学, 医学部, 准教授 (40532768)
井箟 一彦 和歌山県立医科大学, 医学部, 教授 (60303640)
藤本 正数 京都大学, 医学研究科, 講師 (90573676)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 子宮頸癌 / 細胞内脂肪滴 |
Outline of Annual Research Achievements |
子宮頸癌は日本国内で年間約11,000人が罹患し、約3,000人が死亡する癌であり、年々罹患率・死亡率は上昇している。新たな予後予測の指標、治療法の確立は非常に重要かつ急務である。がん細胞では細胞質内の脂肪滴の蓄積が異常な細胞増殖を引き起こすことが示唆されており、近年のがん研究において新たな病態メカニズムや治療標的として注目されている。本研究では子宮頸癌における脂肪滴蓄積の病態意義を解明し、新規の治療標的や予後不良リスクのマーカーとしての有用性を評価することを目的とした。 当院で子宮頸癌に対し手術・放射線・化学療法を施行した症例において、手術もしくは生検で得られた標本の一部である120症例程度(扁平上皮癌:70例、腺癌:50例)のパラフィン包埋腫瘍組織検体を解析対象とした。これらの検体に対し抗アディポフィリン(ADP)抗体による免疫組織化学的解析を行い、高発現と低発現に分類できることが分かった。 また、ワールブルグ効果が子宮頸癌由来細胞株の脂質代謝に及ぼす影響について、子宮頸癌由来CaSki細胞を異なるグルコース濃度で培養し、脂肪滴の形成を抗ADP抗体、Lipi Green等の脂肪滴染色試薬により調べたところ、グルコース濃度依存的に脂肪滴形成が亢進することを見出した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
パラフィン包埋腫瘍組織検体の解析では脱パラフィン工程により脂質が失われてしまうが、脂肪滴を覆うADPを脂肪滴のサロゲートとして用いることにより脂肪滴形成の評価が可能である。令和5年度の研究では、子宮頸癌のパラフィン包埋腫瘍組織検体の免疫組織化学的解析を進め、ADP高発現と低発現の症例に分類した。また、グルコース依存的脂肪滴形成が認められた子宮頸癌由来CaSki細胞において、脂質代謝に関わる酵素の阻害剤を用い、脂肪滴の主成分の解析を進めている。当初の研究計画の内容についておおむね順調に進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
ADP高発現、低発現に分類した子宮頸癌腫瘍組織の症例について、子宮頸癌の進行度、組織型(扁平上皮癌 vs. 腺癌)、ヒトパピローマウイルス感染の有無、放射線感受性や予後とADP発現の関連を解析する。無増悪期間、全生存期間、化学療法の奏効率、病勢コントロール率との相関についてもlog rank検定を用い、Kaplan-Meier法で解析する。 子宮頸癌由来細胞株を用いた実験では、癌細胞内のコレステロール量の制御や脂肪滴に含まれるコレステリルエステル(CE)の生成に関与している可能性がある分子について、siRNAあるいはCRISPR/Cas9を用い、それらの関与を調べる。 がん患者由来オルガノイド(PDO:Patient-derived tumor organoids)は、がん組織の構造や特徴を正確に反映したin vitroシステムであり、2次元の培養と比較して生体内におけるがん組織をより反映した状態で治療薬の評価を行うことが可能である。令和5年度の研究から、子宮頸癌由来PDOにおいて、ADP高発現と低発現のものを確認することができた。このPDOを用いて、グルコース濃度による脂肪滴形成の変化や、スタチン等による増殖抑制を評価し、実際の癌組織に近い環境下で脂肪滴形成が治療標的となる可能性を調べる。
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Causes of Carryover |
種々の実験に使用する試薬、抗体、および細胞培養試薬、消耗品については、キャンペーンなどを利用し、節約に努めたため、当初の予定金額より支出は抑えられた。研究費の繰越分は、子宮頸癌由来細胞株を用いた細胞内脂肪滴形成の分子機構の解析や、PDO試験を委託し、脂肪滴形成阻害による治療標的の探索を行う予定である。また、国内外の学会における積極的な成果発表、研究成果の論文発表のための掲載料等に使用する予定である。
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