2023 Fiscal Year Research-status Report
扁桃病巣疾患における基礎的、臨床的エビデンスの構築
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23K08903
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
高原 幹 旭川医科大学, 医学部, 教授 (50322904)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
熊井 琢美 旭川医科大学, 医学部, 講師 (00596306)
大原 賢三 旭川医科大学, 医学部, 講師 (20596308)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 扁桃病巣疾患 / 掌蹠膿疱症 / IgA腎症 / 口蓋扁桃摘出術 / 口蓋扁桃 |
Outline of Annual Research Achievements |
(ア)臨床学的検討 日本口腔・咽頭科学会主導の扁桃病巣疾患診療の手引き作成において、委員長として、各委員と共同し作成を進め、2023年に無事発刊することができた。本書では、扁桃を中心とした掌蹠膿疱症、IgA腎症の発症機序を解説し、それらの疾患に加えて、胸肋鎖骨過形成症、乾癬、IgA血管炎、PFAPA症候群、反応性関節炎などの各扁桃病巣疾患に対する扁桃摘出術の効果を文献を元に考察し、解説文とともに記載した。 (イ)扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 通常の細菌検査の結果にて、表層のナイセリア菌の同定率がIgA腎症群で高いことが判明した。現在、扁摘予後との相関を検討中である。また、当科で保存している習慣性扁桃炎、掌蹠膿疱症、IgA腎症患者、各20例からの扁桃組織からDNAを抽出、16s rRNA菌叢解析を外部委託会社と連携し行った。膨大なデーターが得られ、現在、統計学的解析を行なっている。 (ウ)ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 IgA腎症患者では扁桃単核球のCD3+CXCR3+細胞数の割合が非IgA腎症患者と比較して有意に増加していた。また、末梢血の陽性細胞数の測定では、疾患群間での変化はないものの、扁桃摘出前後でIgA腎症群のみ低下する傾向が認められた。また、低下した症例は有意に扁桃摘出後の臨床的寛解を得る確率が高かった。 (エ)IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 我々の検討にてその原因としてBAFF、APRILの過剰分泌が挙げられ、現在、その分泌細胞である濾胞様樹状細胞(plasmacytoid dendritic cell:pDC)に着目し、検討を進めている。現在口蓋扁桃からのpDC分離に成功し、培養などを試みている。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
(ア) 扁桃病巣疾患診療の手引き 2023年に発刊し、現在すでに500冊以上を販売している。 (イ) 扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 本検討はデータ解析に特別な知識や手法が必要となる。当大学の先進医工学研究センターの先生方のご協力を得て、現在、細菌叢の違いを種々の統計学的手法を用いて検討している。 (ウ) ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 扁桃T細胞でのCXCR3発現亢進と、末梢血T細胞での扁桃摘出後の発現低下、低下症例での臨床的寛解率の上昇などの結果をまとめ、英文雑誌に投稿予定である。 (エ) IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 口蓋扁桃からのCD304を用いたpDC分離に成功し、現在培養実験を行っている。
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Strategy for Future Research Activity |
(ア)扁桃病巣疾患診療の手引き作成 今後は英文化を行い、英文雑誌に投稿する予定である。 (イ)扁桃病巣疾患における扁桃細菌叢の検討 当大学先進医工学研究センターと共同し統計学的解析を進める。 (ウ)ホーミングレセプターを介した病巣へのT細胞の浸潤 研究成果をまとめ、英文雑誌に投稿予定である。 (エ)IgA腎症扁桃におけるIgA過剰産生 pDCはその分布が数%と少なく、現在、効率よく研究を進めるため、マイクロアレイやRNA-Seqなどの網羅的解析を予定している。 (オ)IgA腎症扁桃における糖鎖不全IgA産生 術後の血清糖鎖不全IgAを経時的に測定し、その推移を検討する。
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Causes of Carryover |
本年は扁桃病巣疾患診療の手引き作成等による執筆活動や出版活動、または本教室における新教授選挙などの準備に時間を費やさざるを得なく、研究においては基本的な項目を施行したのみであった。来年度以降は本科学研究費 を利用し、計画した研究をより濃密に、時間をかけて行うことで、実験による消耗品が増加すると考えられる。また、一昨年購入した消耗品も消費され、再購入の必要がある。特にサイトカインの抗体や、pDC分離キットなどに関しては高額になると予想される。
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