2023 Fiscal Year Research-status Report
非腫瘍性器質的疾患による音声障害に対する低侵襲なoffice-basedの治療戦略の確立
Project/Area Number |
23K08920
|
Research Institution | Kyorin University |
Principal Investigator |
齋藤 康一郎 杏林大学, 医学部, 教授 (40296679)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | 音声障害 / 低侵襲 / 外来手術 / 注入術 / レーザー / ステロイド / bFGF |
Outline of Annual Research Achievements |
研究代表者が現在の施設(杏林大学)に異動した2015年から2023年までに行った、喉頭疾患に対する外来手術ならびに全身麻酔下手術(喉頭微細手術)の内訳を検討しつつ、本研究で対象としている、声帯の非腫瘍性器質的疾患に対するoffice-basedの治療を遂行した。 検討の結果、全身麻酔下手術が2017年(75件)をピークに手術件数は減少しているのに対し(2023年は31件)、外来手術は、診療に様々な制限・配慮が必要とされたコロナ禍でも件数は増加し、2023年には最多(90件)となり、全身麻酔下手術と比較し、低侵襲なoffice-basedの治療に対する需要が増加している現実が浮き彫りとなった。とくに、声帯内のbFGF注入術(24件)とステロイド注入術(14件)は、2023年がいずれもこれまで最多で、今後も期待できると考えられた。一方で、アテロコラーゲン注入術は年々減少し、2023年は13件に留まった。世界的にも、効果が持続せずテスト注入物質と位置づけられているだけに、今後はbFGFなどが取って代わると予測される結果であった。また、詳細な解析は進行中であるが、いずれの症例に関しても、聴覚印象、内視鏡検査、音響分析、空気力学的検査、自覚的評価といったデータは、患者の受診する度に検査し、蓄積されている。なお、途中経過としての治療効果について検討を行い、いずれの治療も有効であることを確認した。 これらの研究結果は、8つの国際学会ならびに2つの国内学会での招待講演を含め、12の学会で発表した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
前述したように、office-basedの低侵襲な音声改善手術は、研究代表者が杏林大学に異動した2015年以来増加し、2023年には最多となった。また、手術の内容としても、旧来のアテロコラーゲン注入術は激減し、声帯のaugmentationやmedializationが必要な症例ではbFGF注入術を行い、炎症性疾患ではステロイド注入術を行うという流れにあることが顕在化した。注入術に関しては、経口的、経皮的(甲状舌骨間膜経由)、経内視鏡的、と三つの手技を行う環境を整え、患者毎に適切な方法を使い分け、確実な施術を行う技術を習得した。治療効果に関する詳細な検討は進行中であるが、途中経過の解析では、いずれの治療も有効性を確認することができた。研究成果ついては、複数の国内外の学会での招待講演を含め、多くの発表する場を得ることができ、引き続き国際学会での発表予定も控えている現状にある。 このように、治療効果の解析は済んでいないものの、順調に症例の集積を推進し、今後解析すべき多くのデータも、治療した症例に関しては既に集積されている。また、手術室から外来に移行しつつある音声外科治療の現状を、世に知らしめる発表も、充分に行うことができたと考えている。
|
Strategy for Future Research Activity |
症例に関しては、声帯のaugmentationやmedializationが必要な症例に対するbFGF注入術、そして声帯の炎症性疾患に対するステロイド注入術を中心に、office-basedの音声外科治療を引き続き推進する。注入術に関しては、経口的、経皮的(甲状舌骨間膜経由)、経内視鏡的という三つの投与経路で行うことができるようになった環境を活かし、低侵襲・安全・確実な施術を行う体制の整備を進める。症例を慎重に選択したうえで、声帯溝症に対するレーザー手術の症例も集積したいと考えている。 順調に集積されている症例に関する、治療効果の解析が、今後重要となる。既に様々な検査データを集積していることは前述したが、それぞれの治療に関し、治療効果発現までの期間や、治療効果発現の持続期間といった、臨床現場で切実に必要となる情報につき、保存されている種々の検査データを用いた解析を進行中である。
|