2023 Fiscal Year Research-status Report
顔面神経再生治療を目的とした鼓室内投与法における神経保護効果の検討
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23K08938
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Research Institution | Ehime University |
Principal Investigator |
山田 啓之 愛媛大学, 医学系研究科, 准教授 (00403808)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
脇坂 浩之 愛媛県立医療技術大学, 保健科学部, 教授 (30304611)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 顔面神経麻痺 / 鼓室内投与 / 神経細胞保護効果 / 再生治療 |
Outline of Annual Research Achievements |
高度顔面神経麻痺の治療として薬剤の全身投与が行われるが、未だ治癒率は満足するものではない。そこで近年、薬剤を直接、神経に到達させる鼓室内投与の開発が注目されている。これまで我々は神経栄養因子を鼓室内に投与し、傷害部位での軸索の再生促進効果を証明してきた(末梢での再生効果)。一方、神経栄養因子は末梢から神経細胞に取り込まれ、神経傷害による神経細胞死を抑制する働きも知られている(中枢での神経細胞保護効果)。しかし鼓室内投与におけるその効果は未だ不明である。臨床応用を目指すにあたり、中枢での神経細胞保護効果を解明することは重要な課題である。そこで本研究では神経栄養因子を鼓室内投与し、中枢での神経細胞保護効果を定量的に検討する。本研究の知見により今後、益々臨床応用が期待される鼓室内投与による再生医療の新たな方向性を示すことが可能となる。 本研究では実臨床への応用を念頭に置き、近年開発されたパウダー状のゼラチンであるGelARTを使用する。このゼラチは薬剤を溶解させる際にその粘度を調節可能で、鼓室内に容易に投与できる。現在までにこのGelARTに溶解させる濃度設定を行い、神経栄養因子は400μg/100μl、ステロイドは660μg/200μlと設定した。また今回用いる実験動物であるモルモットは、その解剖学的特徴から投与したゼラチンが容易に流出しやすいことが分かった。そこでゼラチンを固定するためにフィブリン糊を用いる留置方法を開発した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
動物モデルの作製、投与薬の濃度設定、投与薬を含浸させたGelARTの留置方法を開発しており、今後は実験動物への実際の投与の段階である。そのため研究は多くね順調に進展している。
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Strategy for Future Research Activity |
今後は研究計画に従い、我々が開発した顔面神経冷却麻痺モデル(モルモットの中耳骨胞を開放し、側頭骨内をスプレーフリーザーで5秒間冷却)を使用し、神経栄養因子や副腎ステロイドをGelART(神経栄養因子の活性を保ちながら約2週間、徐放投与できるドラック・デリバリー・システム)に含浸させ、鼓室内の顔面神経管に留置する。この際、顔面神経管の開放は行わない。投与後は機能評価として冷却後、1週ごとに顔面神経麻痺スコアを観察し、麻痺の評価を行い、電気生理学的評価として冷却1週後にENoG検査を施行し、定量的に傷害程度を評価する。また、組織学的評価として冷却4週後と10週後に脳幹組織を摘出し、顔面神経核で神経細胞数を定量評価する。 実験計画では神経栄養因子としてはBasic Fibroblast Growth Factor(bFGF)を用いる予定であったが、近年の研究でInsulin-like growth factor 1(IGF-1)の方が高い神経保護効果を示すことが予想されるため、このIGF-1を神経栄養因子として投与することに変更した。
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Causes of Carryover |
薬剤の濃度設定や投与の準備の経費が削減できたため。
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