2023 Fiscal Year Research-status Report
高齢前庭障害患者の転倒を予防する抗重力筋強化を融合した個別化平衡訓練法の開発
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23K08986
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Research Institution | The University of Tokushima |
Principal Investigator |
佐藤 豪 徳島大学, 大学院医歯薬学研究部(医学域), 准教授 (30464358)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
岡久 哲也 徳島大学, 病院, 理学療法士 (70938521)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 転倒予防 / 抗重力筋 / 姿勢制御 / 足圧分布 / 視刺激 / 仮想現実 / 平衡訓練 |
Outline of Annual Research Achievements |
【背景】姿勢制御には、数多くの抗重力筋が働いているが、前庭障害や視覚誘発性めまいの姿勢制御に関連している抗重力筋はこれまで明らかとなっていない。さらに高齢のめまい患者の転倒予防するための強化すべき抗重力筋も不明である。健常人の前庭刺激および視覚刺激による姿勢動揺に関連する抗重力筋を同定し、高齢者のめまいで強化すべき抗重力筋を明らかとすることで、高齢めまい患者の転倒を予防できる新しい平衡訓練法を開発できる可能性がある。本研究を実施するにあたって、徳島大学病院生命科学・医学系研究倫理審査委員会の承認を得た。【方法】健常人5名を対象としてHMDを用いたVR(仮想現実)による視覚誘発性めまいを一時的に誘導できる視覚刺激(pitch/yaw/rollの視運動刺激およびoptic flow刺激)を行い、重心動揺の変化と表面筋電図を用いて姿勢動揺を安定化させる抗重力筋を探索的に明らかとした。【結果】Roll方向の視運動刺激を与えると、重心動揺の足圧分布は左右方向に有意に移動していた。静止立位に比べて外側広筋、ヒラメ筋、中殿筋の筋活動が大きく上昇していた。Pitch方向の視運動刺激では、足圧分布は前後方向に移動し、前脛骨筋、ヒラメ筋、大腿二頭筋が大きく増加し、Yaw方向の場合、足圧分布に変化はなく、大腿二頭筋、中殿筋が増加していた。Optic flow刺激の場合、重心動揺が前後に移動し、前脛骨筋、ヒラメ筋、腓腹筋内側頭筋、大腿二頭筋、中殿筋、母趾外転筋など多くの抗重力筋が増加していた。視刺激中に転倒やfallする症例はいなかった。【考察】視運動刺激やoptic flow刺激による重心動揺の方向と、筋活動が増加する抗重力筋に一定の相関があることが明らかとなった。今後、健常人に対して回転刺激後の立位や歩行時の筋活動を評価し、一側前庭障害の姿勢制御に必要な抗重力筋を探索する予定である。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
当初の計画通り、健常人を対象にHMDを用いた視運動刺激とoptic flow刺激を転倒しない安全で十分な刺激強度で実験を遂行できている。また、ソフトウェアの動作環境に問題は起きていない。 一方、倫理委員会の審査に時間を要したため、研究開始が当初より遅れてしまった。また、回転刺激については、表面筋電図の記録端子がワイヤレスである必要があり、ワイヤレス端子の調達が遅れているために、現時点では実験が完遂できていない。さらに表面筋電図のワイヤレス端子は8chしかなく、同時に複数の筋活動を記録することができなかったため、想定より測定に期間が必要であった。
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Strategy for Future Research Activity |
視運動刺激やoptic flow刺激による重心動揺の方向と、筋活動が増加する抗重力筋に一定の相関があることが明らかとなった。次年度は、健常人に対して回転刺激後の立位や歩行時の筋活動を評価し、一側前庭障害の姿勢制御に必要な抗重力筋を探索する予定である。また、抗重力筋は上半身から下半身にかけて数多く存在しているため、表面筋電図を同一被検者に複数回行うことによって、特に注目すべき抗重力筋を同定する予定である。回転刺激後の姿勢制御に重要な抗重力筋を同定したのち、実際の難治性めまい患者に対して表面筋電図で立位や歩行時の筋活動を評価し、健常人と比較する予定である。
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Causes of Carryover |
理由:既存の解析システムが故障なく運用できたため、新規購入を行わずに実施することができた。また、抗重力筋の計測端子を更新せずに使用でき、付属の記録メディアの購入も行わなかったため。 使用計画:今後、翌年度分として請求した研究費と合わせてバーチャルリアリティ-刺激のためのヘッドマウントディスプレイ(HTC-VIVE)の新規購入および解析用のPC、モニターおよび姿勢制御の記録撮影や解析のためのタブレット端末、解析ソフトの購入を予定している。
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