2023 Fiscal Year Research-status Report
ラマン分光法による網膜組織の測定法の開発とその応用
Project/Area Number |
23K09005
|
Research Institution | Osaka University |
Principal Investigator |
森本 壮 大阪大学, 大学院医学系研究科, 寄附講座准教授 (00530198)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | ラマン分光法 / アルツハイマー病 |
Outline of Annual Research Achievements |
今年度は、アルツハイマー病(AD)細胞モデルのラマン顕微鏡観察を行い、Aβの蓄積、細胞障害の同時観察を行うことを目的として研究を行った。 10μMレチノイン酸、50ng/mL BDNF 各5日間投与によりSH-SY5Y細胞の神経分化を行い、10uM Aβ投与の上、24時間培養を行うことでAD細胞モデルを作製した。Aβ抗体(11A1)で免疫染色を行ったところ、AD細胞モデルの細胞膜、神経突起におけるAβ集積が確認できた。次に、532nm励起光のスリット走査型ラマン顕微鏡により観察を行った。ADモデル細胞とコントロール細胞のラマンスペクトルの差分を測定したところ、1666cm-1近傍にAβのβシートに由来すると考えられるピークを認め、Aβが検出できていることが分かった。 細胞障害の計測法としては、750cm-1のシトクロムのシグナルに注目した。シトクロムのラマン画像を観察したところ、コントロール群ではミトコンドリアに局所的に集積していたのに対して、ADモデル細胞では細胞質に均質に分布する像が得られた。これは、細胞死に伴う細胞質へのシトクロム拡散、ミトコンドリアの断片化などが原因として考えられるが、これらの病態に関しては今後検討を行う予定である。 上記結果から、AD細胞モデルにおけるAβの蓄積、細胞障害に伴うシトクロムの分布の変化をラマン顕微鏡により検出できることが分かった。 AD細胞モデルのラマン顕微鏡観察により、Aβの蓄積、細胞障害のラベルフリー同時観察が可能となれば、将来的に薬剤開発への応用も可能となると考えられる。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
アルツハイマー(AD)細胞モデルの作製に成功した。AD細胞モデルの細胞膜、神経突起におけるAβ集積が確認できた。次に、532nm励起光のスリット走査型ラマン顕微鏡により観察を行った。ADモデル細胞とコントロール細胞のラマンスペクトルの差分を測定したところ、1666cm-1近傍にAβのβシートに由来すると考えられるピークを認め、Aβが検出できていることが分かり、計測についても成功した。
|
Strategy for Future Research Activity |
本研究課題を引き続き進め、アルツハイマー病細胞モデルで、ラマン分光法でどのような現象が起こっているかを精査し、さらにアルツハイマー病動物モデルマウスでの計測や、患者のiPS細胞から神経細胞を分化させアルツハイマー病モデルとラマン計測の実験系を確立し、薬剤試験などへの活用を目指したい。
|