2023 Fiscal Year Research-status Report
遺伝子改変オポッサムによる、哺乳類網膜でのEYS遺伝子の機能解析と治療シーズ探索
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23K09018
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Research Institution | Ritsumeikan University |
Principal Investigator |
大西 暁士 立命館大学, 総合科学技術研究機構, 教授 (70569102)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
清成 寛 国立研究開発法人理化学研究所, 生命機能科学研究センター, チームリーダー (40721048)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 網膜色素変性 / EYS / ゲノム編集 / オポッサム |
Outline of Annual Research Achievements |
網膜色素変性(RP; Retinitis Pigmentosa)は、外界の視覚情報を受容する網膜・視細胞が変性する進行性の遺伝性疾患であり、日本人の原因遺伝子の第1位はEYS(Eyes shut homolog)遺伝子である。他国でも多くのEYS変異患者が報告され機能解析・治療製剤開発が待たれるが、EYS研究の進捗は他の原因遺伝子に比して極めて漸進的である。要因として、EYSは3000アミノ酸超の細胞外に局在する巨大分子で実験全般に技術を要する事、遺伝子改変解析に汎用され且つ眼科学的検査手法が確立されているマウス(齧歯類)がEYSを持たない事、の2点が挙げられる。我々は、EYS遺伝子を持つ哺乳類で、マウス・ラットと同じ設備で飼育可能なハイイロジネズミオポッサムにおいてゲノム編集よるEYS欠損個体を作出し、発症原理を解明を目指す。 本年度は表現型解析を中心に研究を進めた。WTのオポッサム網膜では他の生物で報告されているように、視細胞のCiliary pocket部分に強いEYS免疫染色シグナルを認め、また、視細胞のCalyceal process、外節部分、リボンシナプスにもEYS抗体由来シグナルが検出された。SpCas9を介したF0ノックアウトでは、生後半年程度より眼底像に進行性のRPEの色素脱失を認めた。これを裏付ける所見として、EYS KOオポッサム網膜の組織染色において、RPE/脈絡膜・神経網膜層の菲薄化を認めた。透過型電子顕微鏡による超微細構造観察より、EYS KOの錐体・杆体視細胞に外節円板膜に変質構造を認めた。Ciliary pocketやCalyceal processにも構造変容を認めたが、他の生物種による報告と異なる傾向を示した。免疫組織化学的解析の結果、外節蛋白質の異所性局在と、染色シグナルの低下が明らかになった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
EYS変異オポッサムにおいて網膜色素変性の病態遷移過程を観察することができ、その疾患進行を裏付ける表現型を免疫組織化学的・組織構造学的手法より検出できた。
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Strategy for Future Research Activity |
引き続き計画通りに研究を進め、分子作用機序の解析のために抗体作製を検討する。
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Causes of Carryover |
オポッサム網膜組織の変動遺伝子解析を企図していたが、交配出産に時間がかかったため本年度内で手続きができなかった。次年度で実施予定。
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