2023 Fiscal Year Research-status Report
Mechanism of RPE regulation by mechano-stress through the transcription factor MRTF/YAP pathway
Project/Area Number |
23K09028
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Research Institution | Yamaguchi University |
Principal Investigator |
木村 和博 山口大学, 大学院医学系研究科, 教授 (60335255)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 加齢黄斑変性 / 網膜色素上皮 / メカニカルストレス / 上皮間葉系移行 / 転写因子 |
Outline of Annual Research Achievements |
滲出型加齢黄斑変性(nAMD)は、網脈絡膜における新生血管からの出血、滲出性変化がその本態である。抗VEGF薬にて治療効果がえられるようになったが、遷延化や網膜下線維化など解決すべき問題は多い。網膜色素上皮細胞(RPE)はバリアとして機能し、その機能障害や上皮間葉系移行(EMT)はnAMDの発症、その後の炎症の遷延化や網膜下線維化に影響を及ぼす。RPEは、ドルーゼン沈着、Pachychoroid、CNV増生、出血などRPE下からの過度のメカニカルなストレスによって機能障害をきたす可能性が示唆されている。そこで本研究では、RPEにおけるメカノセンシングならびにその制御機構に焦点をあてる。RPEを用いて、メカニカルストレスとして細胞伸展ストレッチをこれらの細胞に与えた。それにより、これらの細胞でEMTマーカーである細胞外マトリックスのフィブロネクチンやI型コラーゲン、α-Smooth muscle actinの発現上昇を認めた。現在のこのシステムにおいて、転写因子MRTF及びYAP/TAZを介する経路ならびにこれらとクロストークする新たな転写因子経路の検討を行うため、種々の阻害作用を有する化合物を使用し、EMTマーカー分子発現への作用を検討している。本研究は、nAMD治療の発症からCNV形成、網膜下線維化におけるメカニカルなストレスに焦点をあてた未知の分子機序の解明となる。これらの治験は、新たな治療標的をもたらし、新規治療薬の開発につながることが期待される。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
滲出型加齢黄斑変性(nAMD)の発症、その後の炎症の遷延化や網膜下線維化において、網膜色素上皮細胞(RPE)は中心的な役割を果たす。RPEはバリアとして機能し、その機能障害や形質変化をきたす上皮間葉系移行(EMT)は網膜のホメオスタシス並びに病態に大きな影響を及ぼす。RPE下からのドルーゼン沈着、Pachychoroid、CNV増生、出血などといった過度のメカニカルなストレスは、機能障害、形質変化に影響をきたす可能性が示唆されている。現在、RPE細胞を用いて、メカニカルストレスとして細胞伸展ストレッチを与えるin vitroアッセイ系を独自に確立した。続いて、RPEに経時的なメカニカルな細胞伸展作用を与え、細胞外マトリックスのフィブロネクチンやI型コラーゲン、α-Smooth muscle actin等のEMTマーカーの発現を検討し、これらの分子マーカーの発現上昇を認めた。
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Strategy for Future Research Activity |
本研究では、nAMDの病態に関与していると考えられるメカノストレスのRPEの細胞高次機能へ影響を検討する。まずは、メカノストレスによる細胞増殖や細胞死、EMTなどの細胞高次機能への作用について検討する。最終的にnAMDにおけるメカノストレスが与える病態の一端を解明する。本年度は、RPE細胞を用いて、メカニカルストレスとして細胞伸展ストレッチを与えるin vitroアッセイ系を独自に確立後、メカニカルな細胞伸展作用を与え、細胞外マトリックスのフィブロネクチンやI型コラーゲン、α-Smooth muscle actin等のEMTマーカーの発現上昇を見出した。今後は、EMT以外の細胞高次機能である細胞増殖、細胞接着、細胞死、炎症などへのメカノストレスによる影響を検討していく。
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Causes of Carryover |
本年度はRPE細胞を用いて、メカニカルな細胞伸展作用を与え、細胞外マトリックスのフィブロネクチンやI型コラーゲン、α-Smooth muscle actin等のEMTマーカーの発現上昇を見出した。次年度は、EMT以外の細胞高次機能である細胞増殖、細胞接着、細胞死、炎症などへのメカノストレスによる影響を検討していく。今後の詳細な検討において、種々の測定試薬、キットおよび抗体の使用が必要となる。さらに、定量的かつ網羅的解析を行うため、マルチプレックスシステム及び次世代シークエンサーによる発現プロファイルも検討していくことから、次年度においても研究費の使用額が生じる。実験の進行具合から、初年度の研究費の未使用額が生じた。この未使用額については、前述の解析のため次年度の解析費用に併せて使用する。
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