2023 Fiscal Year Research-status Report
癌転移を制御するVIPR2受容体多量体化の病態的意義に関する創薬基盤研究
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23K09138
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
浅野 智志 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (30570535)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
吾郷 由希夫 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50403027)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | VIPR2 / Cell cycle / Cyclin D / GPCR / Cell proliferation |
Outline of Annual Research Achievements |
我々は最近、血管作動性腸管ペプチド(vasoactive intestinal peptide: VIP)受容体2 (VIPR2)がcAMP/ERK経路を介して乳癌細胞増殖に関与することを明らかにしている(Asano et al., Peptides, 2023)。細胞はG1、S、G2、M期より構成される細胞周期を経て増殖する。今年度は、VIPR2二量体化の解析とともに、VIPR2が細胞周期のどの時期の進行に関与することで細胞増殖を制御しているのか検討した。VIPR2選択的アンタゴニストペプチドであるKS-133の処置は、乳癌細胞MCF-7におけるVIP誘導性の細胞増殖を抑制した。この時、S、G2、M期の細胞の割合が減少していた。VIPR2は、Gαs、Gαi、およびGαqタンパク質に結合し、それぞれERK経路、PI3K経路、PKC経路の活性化に関与している。KS-133の処置はVIPによって誘導されるERK、AKT(PI3Kの下流分子)、GSK3β(AKTの基質)のリン酸化を抑制し、G1期からS期への移行に必要なサイクリンD1レベルの増加を阻害した。さらに、KS-133はPI3K活性とcAMPレベルの増加も抑制した。ERK-specific kinase (MEK) 阻害剤 U0126およびクラスI PI3K阻害剤ZSTK474の処置は、S期の細胞の割合を減少させた。KS-133の処置は、U0126 または ZSTK474 単独の処置よりも S 期の細胞の割合を減少させ、その効果はU0126とZSTK474を併用した時と同程度であった。 これらの結果は、VIPR2シグナルがcAMP/ERKおよびPI3K/AKT/GSK3β経路を介したサイクリンD1レベルの調節によって、G1/S移行とその後の細胞増殖を制御していることを示唆している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
VIPR2による細胞増殖や細胞遊走の調節メカニズムを明らかにするための研究を鋭意進めておりおおむね予定通りに進行している。
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Strategy for Future Research Activity |
VIPR2同士の結合は、その結合に必要な膜貫通ドメイン3と4を含む領域(TM3-4)を細胞に発現させることで阻害できることをプルダウンアッセイやFluorescence resonance energy transfer(FRET)によって明らかにしている。また、TM3-4を安定的に発現する乳癌細胞株を作製し、in vitroのVIPR2シグナル、細胞増殖や遊走の解析を終え、これからin vivoの実験に進む予定である。
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Causes of Carryover |
研究途中で新たにVIPR2の細胞周期への関与が明らかになり、そちらの研究を優先したため、本来の予定使用額と差が生じたが、細胞周期の研究はすでに論文化し、その間にも並行して本研究を進めているので問題はない。次年度研究費は令和5年度の残額と合わせて、TM3-4安定発現がん細胞を用いた転移モデルの準備と実験、解析に充て、VIPR2多量体化のがん転移における意義をin vivoで明らかにしていく予定である。
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