2023 Fiscal Year Research-status Report
糖尿病関連歯周炎による歯肉SARS-CoV-2感染関連因子の発現増強
Project/Area Number |
23K09153
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Research Institution | Kagoshima University |
Principal Investigator |
大西 智和 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 准教授 (30244247)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
千葉 紀香 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 助教 (00468050)
松口 徹也 鹿児島大学, 医歯学域歯学系, 教授 (10303629)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 糖尿病 / 歯周炎 / SARS-CoV-2 / スパイクタンパク / ケラチノサイト |
Outline of Annual Research Achievements |
高齢者及び基礎疾患をもつSARS-CoV-2感染者は重症化しやすく、オミクロン株においてもこの傾向は続いている。歯周炎患者はCOVID-19の罹患率が高いことが報告されており、我々はSARS-CoV-2感染関連因子の1つであるTransmembrane serine protease 2 (TMPRSS2)が歯周炎歯肉で上昇していることを報告した。従来のSARS-CoV-2デルタ株は、細胞に侵入する際にTMPRSS2がウィルス表面にあるスパイクタンパクを切断し、宿主の細胞表面にあるアンギオテンシン転換酵素2(ACE2)に結合する必要があった。しかし、オミクロン株ではウィルスのスパイクタンパクの構造が変化したため、TMPRSS2ではなくカテプシンBがスパイクタンパクを切断しCOVID-19の感染性を獲得することが明らかになった。そこで、本研究では2型糖尿病を伴う歯周炎においてCOVID-19の易感染性を示すため、歯肉にカテプシンBの発現上昇を確認すると共にそのメカニズムを探った。まず、高脂肪食にて飼育することでマウスに2型糖尿病を発症させ、その後ワイヤー結紮にて実験的歯周炎を誘導した。その結果、2型糖尿病を伴う実験的歯周炎歯肉においてTMPRSS2の発現同様にカテプシンBの発現を確認した。また、初代培養ケラチノサイトにおけるカテプシンBの発現メカニズムを探るため、様々な炎症刺激においてカテプシンBの発現の変化を検討した。その結果、IL-1, IL-6, TNF-αおよびLPSの刺激によってカテプシンBの発現が上昇することが判明した。 これらの結果は歯周炎による歯肉へのSARS-CoV-2の易感染性を示唆するものである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
糖尿病関連歯周炎の歯肉では活性酸素などの作用により通常の歯周炎歯肉とは異なる遺伝子発現が予想される。そこで、C57BL/6マウスに高脂肪食と10%フルクトースを4ヶ月間与えることで2型糖尿病を発症させ、タンパク尿はウェスタンブロットによる血清アルブミンの検出および血糖値の測定により発症の確認を行った。次に上顎右第1臼歯にワイヤー結紮を行い、実験的歯周炎を誘導し、左側は健常側とした。そして、両側第1臼歯歯肉を採取し、リアルタイムRT-PCR にて歯肉のSARS-CoV-2感染関連因子の遺伝子発現解析を行った。また、免疫組織学的解析にてSARS-CoV-2感染関連因子であるカテプシンBとTMPRSS2の発現の確認を行った。また、カテプシンBの発現調節メカニズムを探るため初代培養ケラチノサイトにIL-1, IL-6, TNF-α, IFN-γなどの炎症性サイトカインまたはLPSやHGFやFGFで刺激しカテプシンBの発現をウェスタンブロットにて調べた。 2型糖尿病を伴う実験的歯周炎を伴うマウスの歯肉を免疫組織化学的手法にて解析した結果、カテプシンBおよびTMPRSS2の染色性が認められた。そしてリアルタイムRT-PCR解析では2型糖尿病をともなう歯周炎歯肉からより多くのカテプシンBおよびTMPRSS2の発現が認められた。また、初代培養ケラチノサイトの実験からは、炎症性サイトカインであるIL-1, IL-6, TNF-αとLPSによりカテプシンBの発現の増加が認められた。
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Strategy for Future Research Activity |
まず、自然発症の2型糖尿病発症マウスKK/Ayにおいても歯周炎を誘導することで、同様のSARS-CoV-2感染関連因子の発現変化が起こる事を確かめる。そして、この発現の変化は自然免疫応答もしくは獲得免疫応答と関連があるかを調べるため、歯周組織破壊に耐性を持つ遺伝子改変マウスであるTpl2ノックアウト(ko)マウス、及びTh細胞特異的DUSP16ドミナントネガテブトランスジェニック(dnDUSP16)マウスを用いる。これらの遺伝子改変マウス及び野生型マウスに高脂肪食を4ヶ月与え糖尿病マウスを作製した後、実験的歯周炎を誘導する。そして、リアルタイムRT-PCR及び免疫組織学的解析にてSARS-CoV-2感染関連因子の発現解析を行い、糖尿病を誘導した野生型と遺伝子改変マウスに実験的歯周炎処置をした歯肉のSARS-CoV-2感染関連因子の発現を比較する。 また、培養ケラチノサイトを用い、糖尿病で起こる酸化ストレス環境(スーパーオキシド産生や酸化グルタチオン増加やJNKシグナル活性化など)を与え、カテプシンB発現を誘導した炎症性サイトカインにて刺激することで、どのようなSARS-CoV-2感染関連因子の遺伝子の発現変化が起こるか検討する。
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[Journal Article] Early induction of Hes1 by bone morphogenetic protein 9 plays a regulatory role in osteoblastic differentiation of a mesenchymal stem cell line2023
Author(s)
Chang-Hwan Seong, Norika Chiba, Mardiyantoro Fredy, Joji Kusuyama, Kiyohide Ishihata, Toshiro Kibe, Muhammad Subhan Amir, Ryohei Tada, Tomokazu Ohnishi, Norifumi Nakamura , Tetsuya Matsuguchi
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Journal Title
Journal of Cellular Biochemistry
Volume: 124
Pages: 1366-1378
DOI
Peer Reviewed / Open Access