2023 Fiscal Year Research-status Report
Development of innovative PEEK/PEKK adhesion system
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23K09167
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Research Institution | Okayama University |
Principal Investigator |
長岡 紀幸 岡山大学, 医歯薬学域, 助教 (70304326)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
丸尾 幸憲 岡山大学, 大学病院, 講師 (60314697)
入江 正郎 岡山大学, 歯学部, 博士研究員 (90105594)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | PEEK / サンドブラスト / レジンセメント / プライマー |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年12月にPEEK製CAD/CAM冠が保険適用され,すべての大臼歯に使用できるようになった。装着法は,PEEK内面にサンドブラスト処理及びプライマー処理を行い,接着性レジンセメントによる合着が求められる。PEEK合着面のサンドブラスト処理はメーカー指示,日本補綴学会の指針ともに0.1~0.2MPaで実施することが推奨されている。 0.2MPa,0.3MPa,0.4MPaでアルミナサンドブラスト処理した後,プライマー処理し,レジンセメントを用いてせん断試験用サンプルを作製した。サンプル作製して1日後にせん断試験した結果,接着強度は0.2と0.3MPaのサンドブラスト処理で優位差がなく,0.4MPa処理では接着力が増し,0.2と0.3MPa処理に対して優位差があった。しかし,サーマルサイクル3万回または2ヶ月間37℃の水中浸漬した劣化試験の結果,すべての圧力におけるサンドブラスト処理で接着力が低下し,優位な劣化が認められた。PEEKは難接着性材料であり,メーカー推奨のプライマーを用いた推奨合着法を用いても耐久試験後に接着強度の劣化が認められた。 サンドブラスト処理面近傍を断面SEM観察すると,PEEK表面近傍にアルミナ粒子が刺さっており,強圧エアーブローでも除去できない状態であった。特に0.4MPa処理では深く刺さったアルミナ粒子が観察された。メーカー推奨のプライマーは歯科用PEEKに添加される酸化チタンやアルミナ粒子に対するカップリング効果が無い。酸化チタンやアルミナ粒子に対するカップリング材を塗布し,レジンセメント合着した場合,高強度接着が得られなかった。カップリング材塗布の後にメーカー推奨プライマーを塗布し,レジンセメント合着した場合,サンプル作製して1日後の測定では高強度接着が得られた。今後,耐久性試験を実施し,高接着強度,高耐久性のある合着法開発を進める。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度はメーカー推奨の合着方法を中心に,せん断試験を行い,観察,分析を行った。さらに,各種処理条件を変化させながら実験を行った。同一条件下の接着試験数を減らして実験を行い,接着メカニズムの基本情報を得られるように研究を進めた。 一方,簡便な手法でないが,高強度,高耐久性のある接着法の開発では,UV照射によるポリマーブラシ導入法を考えている。この手法でも研究を進めているが,UV照射によりPEEK表面に塗布したメタクリレートモノマーが硬化するなど,多くの問題が生じている。また,予想していたほどの接着力が得られていないのが現状である。 接着界面の電子顕微鏡観察や分析は予定通りに行えており,全体として,おおむね順調に進展していると考えている。
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Strategy for Future Research Activity |
初年度に得られた基本情報をもとに,歯科臨床で用いることのできる簡便な合着法の開発を目指す。具体的な実験方法は,サンドブラスト処理された歯科用PEEK合着面の物性測定をしつつ,これらを考慮して接着試験,耐久試験を進める。サーマルサイクル3万回または2ヶ月間37℃の水中浸漬して劣化試験した。この結果,どちらも劣化試験方法でも接着強度の低下が認められた。サーマルサイクル試験は長期間におよび,装置の許容量の問題から実施できるサンプル数に限りがある。今後は数ヶ月の37℃の水中浸漬により劣化試験を実施する予定である。 UV照射による方法は,メタクリレートモノマーの種類,UV照射法の改良で対応する予定である。
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Causes of Carryover |
PEEKポリマーに対しポリマーブラシを導入するには紫外線照射が必須である。当初の予定では,特定波長のUVを照射できるLED UV照射器を購入であったが装置が高価である。そこで基礎実験で有効性を見極めるまで購入を見送った。まずは,水銀灯UV照射器を使用して基礎実験を進めることとした。この実験方法では,当初の想定ほどの接着強度が得られていない。今後,十分な検討を行った上でLED UV照射器の購入を検討する。 PEEKへのアルミナサンドブラスト処理で,アルミナ粒子の分布をマイクロX線CTで3次元観察を予定している。また,サンドブラスト面の断面SEM観察と分析を予定しており,解析用にPC購入を予定している。 この他,耐久性試験ではPEEK材が多く必要となると思われ,これらと,接着試験片作成に必要な材料などの購入費用として使用する。
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