2023 Fiscal Year Research-status Report
Designing biomaterials for in situ tongue regeneration
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23K09231
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Research Institution | Hiroshima University |
Principal Investigator |
加藤 功一 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (50283875)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
平田 伊佐雄 広島大学, 医系科学研究科(歯), 助教 (40346507)
柳本 惣市 広島大学, 医系科学研究科(歯), 教授 (10315260)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 組織工学 / 舌がん / 筋芽細胞 / 骨格筋 / 細胞成長因子 / タンパク質工学 / 融合タンパク質 |
Outline of Annual Research Achievements |
舌がんの治療を目的として舌の切除と皮弁移植が行われる。しかしながら、移植組織の機能は限定的であるため、より本来の舌に近い機能をもつ組織の再生が望まれる。そのような背景のもと、組織工学によるアプローチが注目されているが、大きい体積の骨格筋からなる舌を上手く再生できる方法が未だ確立されていない。そこで本研究では、舌再生のための新たな手法の確立を目的として、in situ組織再生用人工舌を設計することとした。 まず、舌の切除面での組織再生を促すことのできる人工マトリックスの設計に重点を置いて研究に取り組んだ。舌を構成する骨格筋の再生を促すには、周囲の筋芽細胞を誘引できる人工マトリックスが有効であるとの仮説に基づき、これを促す細胞成長因子を探索した。種々の細胞成長因子を添加した培地を用いてマウス由来筋芽細胞の移動アッセイを行った結果、塩基性線維芽細胞成長因子(bFGF)がもっとも効果的に細胞の移動を促進することがわかった。 以上の結果をもとに、人工マトリックスの内にbFGFを組み込む方法を検討した。人工マトリックスとしてコラーゲン製多孔質材料を用いることを考え、コラーゲンに親和性のあるポリペプチドドメイン(CBD)を融合したbFGFを遺伝子工学の手法によって作製することを試みた。コラーゲンへの結合性の異なる3種類のCBDに注目し、コラーゲンへの結合性を評価した。 作製された融合タンパク質をコラーゲン製スポンジ内に複合化し、筋芽細胞の浸潤実験を行った。その結果、bFGF融合タンパク質の細胞浸潤促進効果が確認された。現在、より定量的なデータの取得に向けて実験を継続している。 一方、舌の形状をもつ人工マトリックスの作製方法についても検討した。疑似舌の3Dスキャン画像データをもとに、その鋳型を合成高分子で作製し、その内部でコラーゲン製スポンジを作製する方法が簡便かつ有効であることを示した。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
研究の進行に伴い、当初の研究計画からやや方向修正をした点もあるが、概ね計画通りに進んでいると認識している。
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Strategy for Future Research Activity |
これまでの研究結果を踏まえ、とくに重要であると考える以下の3点に重点を置いて研究を進める。 (1)bFGF融合タンパク質の改良と構造・機能評価:一般に融合タンパク質が目的とする機能を発揮するためには、構成要素である各ドメインが正常にフォールディングされ、本来の高次構造を取らなくてはならないが、融合タンパク質でこれが実現するかは自明ではない。そこで、本研究で設計・作製する融合タンパク質について人工知能技術をベースとするタンパク質高次構造予測プログラムAlphaFold2を用いたin silico構造解析を行う。そこで得られる情報を基に、より機能性に優れたbFGF融合タンパク質を作製し、その評価を行う。 (2)bFGF融合タンパク質複合化コラーゲン製マトリックス:bFGF融合タンパク質を複合化したコラーゲン製マトリックス内での筋芽細胞(C2C12細胞)の挙動に関する評価を行う。評価の視点は、細胞の浸潤、増殖、筋細胞の分化・成熟とする。 (3)舌の形態をもつ人工マトリックス:組織の3次元スキャン法を活用した人工マトリックス賦形法について引き続き検討する。これまで、疑似舌のスキャン画像データを用いて鋳型を作製し、その内部でコラーゲン製スポンジを作製する方法を検討してきたが、本年度は、これに加えて、コラーゲンゲルをインクとする3D造形法について検討する。
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Causes of Carryover |
購入を予定していた一部の消耗品の納期が、通常より大幅に遅くなったためである。令和6年度に早急に購入を進める。
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