2023 Fiscal Year Research-status Report
破骨細胞をターゲットにした超分子による骨吸収抑制治療薬の新たなアプローチ
Project/Area Number |
23K09264
|
Research Institution | Osaka Dental University |
Principal Investigator |
吉川 美弘 大阪歯科大学, 歯学部, 講師 (70434793)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
池尾 隆 大阪歯科大学, 歯学部, 教授 (40159603)
吉澤 達也 熊本大学, 大学院生命科学研究部(医), 准教授 (40313530)
川本 章代 大阪歯科大学, 歯学部, 准教授 (50368156)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
|
Keywords | シクロデキストリン / 破骨細胞 / 骨 |
Outline of Annual Research Achievements |
骨粗鬆症は、骨量が減少し、骨折しやすくなる病気である。代表的な骨粗鬆治療薬であるビスホスホネート製剤があるが、副作用として顎骨壊死が起こる。発症する原因は解明されておらず未だ詳細は不明のままだが、ビスホスホネートが破骨細胞内で代謝できないことが一因として考えられる。本研究はβ-シクロデキストリンの空洞部に高分子が貫通した超分子ポリマーであるポリロタキサンに骨結合性の官能基を修飾し、破骨細胞の機能をコントロールすることによって、副作用の少ない骨粗鬆症治療薬の応用へと展開するための研究基盤を確立することが目的である。昨年までにin vitro実験において、カルボキシ基が修飾されたポリロタキサンが、リン酸カルシウムプレートに結合し、破骨細胞の機能を抑制したことを明らかにした。本年度は昨年までの結果を踏まえてメチル基、ジメチル基、トリメチル基が修飾されたβ-シクロデキストリン(M-β-CD、DM-β-CD、TM-β-CD)を破骨細胞に作用させた。すべてのメチル基を修飾したβ-シクロデキストリンで破骨細胞の分化は抑えられた。特にトリメチル基の抑制効果が大きかった。さらに、M-β-CDが細胞膜からコレステロールを枯渇させることによって細胞死を誘導するかどうかを確認するために、低比重リポタンパク質受容体(LDLR)の発現を分析すると、DM-β-CDはRAW264.7細胞のLDLR発現を増加させた。これらの結果は、DM-β-CDが破骨細胞においてコレステロールの減少を誘導し、その生存に影響を与えることを示唆している。骨結合性の官能基だけでなく、その他の官能基を変えることで破骨細胞の分化に影響をあたえることが示唆された。この結果は、様々な官能基を修飾したβ-シクロデキストリンが破骨細胞の分化を調節することにより、副作用の少ない骨粗鬆症治療薬開発の一助となる可能性が示唆された。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
当初の予測ではin vivo実験においてカルボキシ基を修飾したポリロタキサンが骨に集積すると考えていた。実際にマウスを用いて実験を行ったところ、骨に集積することはなかった。そこで、別の骨結合性の官能基を修飾することを考えた。そのために、まず破骨細胞に最も影響を与える官能基を調べた。それについては論文で公表した。さらに骨結合性の官能基をβ-シクロデキストリンに修飾した化合物の合成に時間がかかってるため、予定より遅れている。
|
Strategy for Future Research Activity |
本年は破骨細胞の分化調節に適したβ-シクロデキストリンを調べたので、今後はこの結果をもとに骨結合性の官能基を修飾したポリロタキサンを合成し、in vitro実験ではヒドロキシアパタイトへの結合を確認したのち、破骨細胞の分化や吸収能の影響を調べる。in vivo実験ではマウスを用いて、骨に集積することを確認し、骨への影響を調べる。
|
Causes of Carryover |
想定していた実験結果と違った結果が得られたため、実験内容に変更があった。 その結果、使用額にも変更があった。
|