2023 Fiscal Year Research-status Report
食欲に対するグレリンの作用に着目した、サルコペニアおよび口腔機能改善法の探求
Project/Area Number |
23K09303
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Research Institution | Tokyo Dental College |
Principal Investigator |
唐帆 純子 (中島純子) 東京歯科大学, 歯学部, 准教授 (20534853)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
片山 正輝 東京歯科大学, 歯学部, 教授 (00286494)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 食欲 / サルコペニア |
Outline of Annual Research Achievements |
超高齢社会の本邦では健康寿命の延伸が重要な課題であり、生活機能障害を招くフレイルやサルコペニアが注目をされて久しい。サルコペニアは筋肉量の減少、筋力低下、身体の機能低下で定義され、サルコペニア→基礎代謝量の低下→エネルギー消費量の低下→食欲の低下→低栄養→サルコペニア→とループし、フレイルサイクルと呼ばれる負の連鎖により要介護状態に近づくことが知られている。そのため、機能的な健康状態の維持、健康寿命の延伸においては、フレイルサイクルの形成因子に対する多面的なアプローチが必要である。 我々は予備的研究として、非経口摂取の継続が全身的なサルコペニアの進行、口腔周囲筋の筋力、オーラルディアドコキネシスへ及ぼす影響について解析を行った。その結果 2週間以上の非経口摂取継続群は、経口摂取群よりも握力、口唇閉鎖力およびオーラルディアドコキネシスが有意に低下し、二次性サルコペニアの予兆がみられた。また、客観的に摂食嚥下機能に問題は無い患者の経口摂取へ移行できない要因に、「食欲不振」があることも分かった。このように、必要な栄養量を提供しても「食欲」の問題で、実際には必要エネルギーを摂取できない高齢者が多いことが明らかになった。つまり、高齢者は食欲という壁に阻まれてフレイルサイクルの一因子である低栄養に陥ることがあり、今まで未着手であった食欲に対する介入が求められている。内因性のペプチドであるグレリンは成長ホルモン分泌促進因子として発見されたが、グレリンの作用は多面的であり,摂食促進、筋肉量増加などの報告がある。本研究ではヒト血清グレリン濃度と食欲、サルコペニア、および口腔周囲筋の筋力・口腔機能との定量的な関係の解明を計画している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
サンプルの計測にあたり、サンプルの送付方法や採取方法の解析業者との調整に時間を要した。そのため、倫理審査委員会の申請・許可が大幅にずれ込んでいる。
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Strategy for Future Research Activity |
我々の施設の摂食嚥下支援チームまたはNSTに介入依頼があった、摂食嚥下機能評価および訓練または栄養管理を要する者を対象とし、食欲に関する調査(患者の主観に基づくアンケート調査:SNAQ、CNAQ-J)、安静時基礎代謝量を用いた必要エネルギー充足率の評価、血漿タンパクによる栄養評価、 血清グレリン濃度の評価および口腔周囲筋の筋力、口腔機能の測定、全身のサルコペニアの評価を行い、各々の関連を検討する。 血清グレリン濃度と食欲、サルコペニアの関連性が解析により示されたた場合、血清グレリン濃度の分泌増進効果があるとされている六君子湯の投与による食欲およびサルコペニアの改善を検討をしたいと思っている。課題としては、前半の解析を終了後に倫理審査を再度申請する必要があるため、介入研究が時間的またはデータ数が見込まれない等の理由により開始できない可能性がある。そのため、グレリン濃度と嚥下機能なども絡めて考察するなど、臨機応変に対応をする予定である。
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Causes of Carryover |
血清グレリン濃度測定に関する倫理審査委員会の承認が得られていないため、外注を予定している検査費用の支出が今年度は生じなかった。次年度は、検査を外注する予定であるため、繰り越して使用する予定である。年度内に旅費等を支出しているが、年度内の事務処理が間に合わなかったため、次年度の会計から処理をおこなっている。その結果、書類上、今年度の支出が生じなかった。
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