2023 Fiscal Year Research-status Report
HBp17の立体構造に基づいた口腔癌の発生と進行メカニズムの解析
Project/Area Number |
23K09392
|
Research Institution | University of Fukui |
Principal Investigator |
阿久津 純一 福井大学, 学術研究院医学系部門, 助教 (40896346)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 口腔癌 / タンパク質発現 |
Outline of Annual Research Achievements |
Heparin binding protein 17/Fibroblast growth factor-binding protein-1(HBp17)は線維芽細胞増殖因子(FGF)と結合することでFGFの細胞外分泌を誘導するタンパク質であり、FGFは細胞外へ分泌されることで血管新生の誘導や癌細胞の増殖を促進すると考えられている。近年になってHBp17は口腔扁平上皮癌で高発現していることが明らかとなり、口腔癌の発生や進行の重要因子として注目されてきた。ところが、HBp17とFGFの結合様式の詳細は不明であるため、HBp17をターゲットとした新規口腔癌治療法の開発にはHBp17の立体構造の解明が喫緊の課題となっている。本研究の目的は、組替え大腸菌もしくは昆虫細胞により大量発現させたHBp17の立体構造を解析し、HBp17の立体構造からFGFとの結合様式を明らかにすることでHBp17による口腔癌の発生や進行のメカニズムを解明することである。 既に公開されているヒトHBp17DNA配列を基に、合成したDNAを市販のタンパク質発現ベクターに組込むことにより大腸菌でのHBp17発現ベクターを作製し、大腸菌を形質転換することでHBp17の発現系を作製した。しかし、大量の発現は確認できなかった。同様にFGF1の大腸菌での発現系を作製したところ、大量発現の確認はできたが、不溶性タンパク質として発現した。また、HBp17とFGF1の共発現系を作製したが、FGF1の発現は確認できたがHBp17の発現は確認できなかった。そこで、昆虫細胞を利用したHBp17の発現系を作製したところ、細胞外への発現が確認できた。現在、HBp17の大量発現を試みるべく、発現量増加のための検討を行っている。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
大腸菌によるHBp17の発現系を構築したが、発現量が少ないためX線構造解析に必要なタンパク質量の回収までには至っていない。現在、培養方法やホストの変更などによる目的タンパク質の発現量増加を試みている。
|
Strategy for Future Research Activity |
HBp17の発現量が少ないため、発現量増加を試みる。現在はpETsystemの発現ベクターを使用しているが、他の発現ベクターの使用も検討する。また、真核生物由来タンパク質の発現に定評のある複数の発現用大腸菌を用いて発現量の検討を行う。さらに、培養条件の検討や培養量を増やすことで発現タンパク質の回収量を増加させる。 目的タンパク質の発現量と回収量が増加したら、液体クロマトグラフィーで精製を行い、精製タンパク質の結晶化条件を検討する。
|
Causes of Carryover |
当該年度は予想していた消耗品の使用量が少なく、試薬等の購入費がなかったため、次年度使用が生じた。次年度は、発現タンパク質の精製に必要なカラムや結晶化のためのスクリーニングキット等のやや高額な消耗品の購入に使用する予定である。
|