2023 Fiscal Year Research-status Report
ヒト乳歯幹細胞の研究活用:ADHDの神経発達障害おけるメラトニン系の役割解明
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23K09417
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Research Institution | Kyushu University |
Principal Investigator |
増田 啓次 九州大学, 大学病院, 講師 (60392122)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 注意欠如多動症 / メラトニン / 神経発達障害 |
Outline of Annual Research Achievements |
ヒトの乳歯には、ニューロンに誘導可能な神経堤由来間葉系幹細胞が存在する。神経発達障害児由来の乳歯幹細胞は、ニューロンの発達障害の細胞モデルとして活用できる。ADHDは、最も頻度の高い神経発達障害の1つである。睡眠は脳の発達に不可欠であることから、ADHDの発症と睡眠障害との関連性が推定されているが、その詳細は未解明である。本研究では、夜間に脳内で分泌される睡眠促進因子メラトニンに着目し、ADHD患児由来乳歯幹細胞を用い、メラトニンがADHDの神経発達障害にどのように関与するかを明らかにする。2023年度では、定型発達児およびADHD児、それぞれ3名から提供された乳歯幹細胞(Ctrl-SHEDとADHD-SHED)が、メラトニンの存在下または非存在下でDN(ADHD-DN)に分化することを明らかにした。次に、ドーパミンがDNへの分化にどのような影響を及ぼすかを明らかにするために、DN分化マーカーの発現レベル、神経突起の形態、ミトコンドリア機能(ミトコンドリア膜電位、カルシウムレベル、ATP産生能)について調べた。DN誘導培地にメラトニンを添加することにより、ADHD-DNの神経突起の長さと分枝数の増加がみられた。一方、DN分化マーカーの発現レベルは変化しなかった。したがって、メラトニンはADHD-DNの神経成熟を促進する可能性が示唆された。また、ミトコンドリア機能(ミトコンドリア膜電位、カルシウムレベル、ATP産生能)については、現在、統計学的有意差の検定を行っているところである。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
ADHDの病態に関連するDNの発達障害に対し、メラトニンが神経突起の成長を促進する証拠を得ることができた。これは、ADHDの神経発達障害にメラトニンが薬物学的有効性を示すことを示唆する。これをもとに、次年度以降はその分子機序の解明へと発展させることが可能である。
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Strategy for Future Research Activity |
次年度以降は、DNの神経突起の発達に対するメラトニンの作用機序について、メラトニン受容体を介したシグナル経路について、分子生物学的に明らかにする。また申請者は、過去にADHD-DNの神経突起発達の欠陥にはミトコンドリア機能障害が関連することを明らかにした。したがって、メラトニンがADHD-DNのミトコンドリア機能にどのような影響を及ぼすかを調べる準備を進めている。
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Causes of Carryover |
主たる研究費は、細胞培養に必要なプラスティック器具、培地、培養試薬、および細胞学的解析に必要な試薬と抗体、遺伝子解析に必要な試薬の購入に使用した。実験に際しては、今年度の予算が不足しないよう、細心の注意を払って無駄を省き、節約を心がけた。その結果、7,190円の余剰金が生じた。この余剰金は、次年度以降に上記の試薬類の購入に当てる計画である。
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