2023 Fiscal Year Research-status Report
Analysis of difficulties encountered in academia by clinical research support professionals without medical work experience.
Project/Area Number |
23K09545
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Research Institution | Asahikawa Medical College |
Principal Investigator |
神山 直也 旭川医科大学, 医学部, 助教 (20431398)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 臨床研究専門職 / ARO / プロジェクトマネジメント / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
本研究は社会人経験が豊富で医薬品開発に関する高い専門性を有している専門人材であっても、AROでは予想外の認識のずれに戸惑い、専門性をアカデミアのために生かし切れず、アカデミア側も企業文化の理解が乏しいといった事例に対し、医療職経験の有無が困難さに与える影響に着目し、医療社会学の側面から深く分析を行うことを目標としており、研究対象としてARO内の非医療職種に焦点を当てた研究は前例がない。そこで、医療職経験のない臨床研究専門職がアカデミアで直面する困難さについてはまず、臨床試験専門職全体が支援において感じる困難さを分析し、そのなかでも非医療職が医療職に対して感じる困難さを抽出することが重要と考えた。令和4年度AMED研究開発推進ネットワーク事業「Quality by Designを用いた研究計画立案及び実装を可能とする研究支援体制の構築」(代表:松山琴音)において研究者と支援者に対して行なわれたフォーカスグループインタビューの分析結果や、同「アカデミアシーズの実用化に向けた研究開発体制における研究マネジメント人材の育成システム開発に関する研究」(代表:菊地佳代子)において実施された「つながり対話会」などをもとに、支援に対する困難さを幅広く収集し、その中から非医療職が医療職に対して感じる困難さを抽出し、現在はその困難さを分類を試みている段階である。計画では文献調査のあとすぐに半構造化面接をデザインする予定であったものの、こうした抽出を経ることでより問題の本質に迫る質問によって構成できると考えている。臨床研究中核病院や橋渡し研究拠点だけでない、いわゆる「非中核」の研究機関における非医療職の活用に生かせる形での成果報告を本研究における成果物としたい。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
申請時期に並行して分担研究者として実施していた令和4年度AMED研究開発推進ネットワーク事業「Quality by Designを用いた研究計画立案及び実装を可能とする研究支援体制の構築」で研究者と支援者に対して行ったフォーカスグループインタビューの分析が令和5年度も続いたため、本研究課題に充てる時間を十分に確保することができなかった。しかし、このインタビューからも現場の非医療者を含むnon-MD(非医師)と医師との間のコミュニケーションの困難さを指摘する声を拾っており、それらを複数人で吟味しながら整理・分類することができたため、これから行う半構造化面接を組み立てるうえで有用であったと考えている。 当初より対象を医療職経験のない企業出身の医薬品開発経験者に限定して企画していた一方、自施設においては該当するプロジェクトマネージャーが居らず半構造化面接の組み立ての試行錯誤が想定していたよりも難航してしまった。こうした現在の自施設の抱える問題と、今回の研究テーマが必ずしも重ならない部分も多く、自施設の問題解決を優先しているうちにこちらの研究に対してエフォートを十分に割くことができていなかった。そのため、学内の研究指導者にも必要なコミュニケーションを取ることを後回しにしているうちに、研究を実施フェーズに進めるための指導を受け始める時期が大幅に遅れてしまった。現在は研究の進め方についても、遅れを挽回することも含めて指導いただいている。
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Strategy for Future Research Activity |
治験・臨床研究の支援における問題点についてはAMED研究開発推進ネットワーク事業などを通して様々に指摘されており、今回の研究テーマである医療職経験のない臨床研究支援専門職がアカデミアで活躍するための要因分析はアカデミアの研究を実用化、産業化につなげるうえで極めて重要である。医療においてはチーム医療が浸透し多職種連携が進展してきたものの、医学研究においては臨床試験専門職が医師に専門職と認知されていないことが支援の困難さとなっているとの仮説をもとに、その仮説を身近なところから検証しながら、より確度の高い、原因の探索につなげていく。自身で行う半構造化面接の早期実施だけにこだわらず、非医療職が医療の組織で専門性を発揮するうえで障害になる要素をひとつひとつ分解し、その解決のために何が必要なのか、望まれているかについて分析を行う。これらは自施設における研究支援でも非医療職を活用することに生かせるものであり、自施設の課題解決の一部でもあると認識し、エフォートの確保に努める。 半構造化面接のブラッシュアップについても質的研究の研究者の助言を得ることで研究としてのまとめ方にも意識して進めることとし、実施・分析段階で遅延が起こらないようスケジュール管理についても強化する。
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Causes of Carryover |
半構造化面接をブラッシュアップするための謝金等の使用を見込んでいたものの、その作成まで計画が進捗しなかったこと、インタビュー実施のための謝金・旅費を使用しなかったことが次年度使用額が生じた主たる理由となっている。次年度はこれらの使用が発生する見込みである。また、単にブラッシュアップをアカデミア経験の長い企業出身者に依頼するのではなく、質的研究を行っている研究者にも助言いただくなど、ブラッシュアップのための謝金等の配分についても再検討を行う。 一方、期間内に成果を学術誌に発表するための論文投稿費や英文校正費については当初の見込みより費用の増加が見込まれることから、それらの費用に充てるため、インタビューを効率化するなどの見直しも行うことで必要な経費を捻出する。
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