2023 Fiscal Year Research-status Report
臓器専門診療科入院患者を対象とした領域横断的診療支援システムの開発および効果測定
Project/Area Number |
23K09620
|
Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
上原 孝紀 千葉大学, 医学部附属病院, 講師 (60527919)
|
Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
小林 美亜 山梨大学, 大学院総合研究部, 特任教授 (00327660)
生坂 政臣 千葉大学, 医学部附属病院, 教授 (20308406)
|
Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
|
Keywords | 総合診療 / 病棟診療支援 / 病棟総合医 / ホスピタリスト / 医師働き方改革 / 医師生涯教育 / 医療の質、安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
2023年度は4年計画の初年度として、本研究の基盤を構築した。本研究は総合診療科が大学病院の全入院患者を対象とした病棟診療支援を実践し、複合アウトカムを用いてその効果を評価するものである。患者の募集は従来の医師からの紹介に加え、看護師や薬剤師など、多職種からの直接的な情報共有を通じて行われるため、このアプローチは独創的である。複合アウトカムは、各診療科の診療録及びDPCデータからの情報抽出を計画しており、病院各部門の協力と理解が不可欠である。そのため、病院長や35診療科長、看護部長との面会を始め、35診療科の医局会、師長会議、薬剤部等、院内78部署に対して、予備的な説明を対面およびテレビ会議システムを用いて行い、全部署からの研究協力への承諾を得た。 1月からは全病棟での試験的な回診を開始し、1月から3月の3ヶ月間で25名の入院患者の紹介を受け、診療支援を行った。患者は、従来より診療支援を行っていた外科系診療科から16名(整形外科、脳神経外科、産婦人科など)、および新たに支援を開始した内科系診療科から9名(循環器内科3名、脳神経内科2名、代謝内分泌内科1名等)であり、病院全体からの総合診療科の病棟診療支援へのニーズの高さを再確認した。 さらに、本研究のパイロット研究である、外科系診療科を対象とした病棟診療支援の取組について、2023年10月に米国クリーブランドで開催されたSociety to improve Diagnosis in Medicineにおいて、学会発表を行い、各国の研究者と情報交換を行った。 以上の試験的な介入、国際学会発表を踏まえて、2024年度に向けた、総合診療科スタッフが全病棟で定期的な回診を行う体制の整備、および診療録及びDPCデータから抽出するデータの選定を行い、研究計画の2年目での診療支援介入の実践へと進める基盤を今年度は構築した。
|
Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
在籍する総合診療科の常勤職員は2022年度まで5名であり、本研究で診療支援を行うチームの指導医となる者であるが、そのうちの1名が退職となり半年間常勤職が空席となり、また1名は他部門の専属となって、1年間稼働した常勤職員は3.5名と3割減となってしまった。さらにフルタイム勤務する非常勤医師枠は4.6名配分されているが、産休育休取得に伴い半年不在となったため、4.1名と1割減での診療科運営を行うこととなった。そのため当初予定していたエフォートを臨床、教育に割かなければならなくなったことが、進捗がやや遅れている理由である。ただし研究実績の概要に記述したように、本研究を2024年度に実践するための本院の全体の理解、協力を得る承諾は取れており、研究全体は計画通りに進められる予定である。
|
Strategy for Future Research Activity |
【2024年度】 ・総合診療科チームによる実態調査:問題を抱える患者の選定や、問題解決のプロセス(支援要請の依頼元、診断と治療の変更など)を可視化し、臨床教育に活用するための構造化を行う。効果検証のため、従来の臓器専門医による一般診療を行う対照群と、多職種からの支援要請を受けて問題解決を行った介入群の間で複合アウトカムを比較する。具体的には、主科の診断と治療が大幅に変更された場合に、転帰判定委員会が判定を行う。 【2025-26年度】 ・主研究:介入群と対照群を複合アウトカム指標(再入院率、在院日数、治療計画の変更等)を用いて比較検討する。分析は傾向スコアを用いて行う。先行研究に基づくと、再入院率の効果量を20%、有意水準を5%、検出力を80%と設定した場合、必要なサンプル数は93人と見積もられる。本院の外科系17診療科を対象としたパイロット研究では年間200人が対象となっており、本研究では全診療科を対象にした場合、必要なサンプル数を十分に確保できる見込みである。 ・副研究:領域横断的診療支援の効果について、多職種を対象としたアンケートや半構造化面接を通じて、質的研究と量的研究を統合した混合研究アプローチで考察を深める。また、医学生・臨床研修医を対象とした本介入の教育効果を検証を行い、医師の生涯学修のための臨床基盤を構築し、提言を行う。
|
Causes of Carryover |
現在までの進捗で記載したように、2023年度は予期せぬスタッフの減員があり、初年度に購入を検討していたデータ入力用パソコン、外部記憶装置の購入を要さなかったため、2024年度に購入することとした。そのため次年度使用額が生じた。
|