2023 Fiscal Year Research-status Report
下水処理水を利用した新型コロナウイルスの国内発生時期の解明
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23K09630
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Research Institution | Hokkaido University of Science |
Principal Investigator |
古谷 大輔 北海道科学大学, 保健医療学部, 教授 (50404728)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 新型コロナウイルス / 下水疫学調査 |
Outline of Annual Research Achievements |
近年、下水中の新型コロナウイルス濃度はパンデミックの挙動(流行の始まりや増加速度、流行の規模、流行の収束)と相関することが報告されており、下水調査が注目されている。下水中の新型コロナウイルス濃度は、感染者のみならず、未受診の感染者や不顕性感染者から排泄されたウイルスを反映しており、その地域の正確な流行実態の把握に有用と考えられる。本研究では、国内の初期流行地域の一つである札幌で収集した下水サンプルを用いて、下水中の新型コロナウイルスを解析することで、その発生時期の実態を明らかにすることを目指す。2019年10月から2020年10月までの1年間に、札幌市の2か所の下水処理場から毎週採取した下水処理水、各47サンプルを対象とした。下水サンプルは採取後、ポリエチレングリコール法で1,000倍に濃縮後、解析まで-80℃で保管された。リアルタイムPCR法による新型コロナウイルスの検出には、Primerdesign社製のgenesig Standard Kit「2019-nCoV」を用いて解析した。増幅領域はRNA dependant RNA polymerase (RdRp)であり、RNAを試料としたone-Step qPCRである。札幌市における新型コロナウイルスの定点当たり報告数では、2020年2月からパンデミックが始っており、下水中に新型コロナウイルスの存在が予測された。しかしながら、解析の結果、すべてのサンプルで新型コロナウイルスが検出されなかった。測定系の最適化をして再度検出を試みたが、やはり新型コロナウイルスが確認できなかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
リアルタイムPCR法による下水中の新型コロナウイルスの検出を解析した。使用した市販の検出キット、Primerdesign社製のgenesig Standard Kit「2019-nCoV」ではウイルスを検出することができなかった。逆転写酵素の種類変更やtwo-step qPCRへの変更など測定系の改良や最適化などを試みたが、やはりウイルスを確認できなかった。測定した下水サンプル中にウイルスの存在が予測されることから、下水を対象としたウイルスの検出に本キットの限界があると考えられた。
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Strategy for Future Research Activity |
公益 社団法人日本水環境学会「下水中の新型コロナウイルス遺伝子検出マニュアル 新技術マニュアル」(2023年6月)に収載されたSARS CoV 2 Detection RT qPCR Kit for Wastewater (タカラバイオ株式会社) を用いて再度検出を試みる予定である。本キットは、ウイルスのN(Nucleocapsid)遺伝子領域の2か所(CDC N1とN2)を同時増幅するため感度の向上が期待できる。今後、札幌市における新型コロナウイルスの発生時期の実態解明を目指す。ウイルスが検出された場合、シークエンス解析で塩基配列決定し、分子系統樹を作成することでその起源の特定を行う。
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Causes of Carryover |
リアルタイムPCR法で新型コロナウイルスの検出ができない原因の特定に時間を要し、研究がやや遅れている。そのため、本来ウイルスの検出に用いるべき試薬費用が当該助成金として生じた。翌年度分と合わせて、ウイルスの検出する際の試薬費用に充てる予定である。
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