2023 Fiscal Year Research-status Report
肺がん細胞における銀ナノ粒子のリソソーム膜融合の阻害メカニズム
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23K09677
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Research Institution | Tokyo Women's Medical University |
Principal Investigator |
宮山 貴光 東京女子医科大学, 医学部, 助教 (20620397)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | ナノ粒子 / 銀 / オートファジー / リソソーム / 肺がん / クロロキン |
Outline of Annual Research Achievements |
銀ナノ粒子を処理した肺胞上皮腺がんモデル疾患細胞A549のリソソームと膜融合の阻害メカニズムを解析するため、リソソームの内腔pHを上昇するライソトロピック化合物、すなわち、クロロキンを併用したときの細胞死とオートファジー機構への分子基盤を評価した。 A549細胞に銀ナノ粒子を50-200 μg Ag/mlで用量依存的に処理すると細胞死は増大するが、同時にクロロキンを併用処理しても細胞死の増減に更なる変化を認めなかった。50 μg Ag/mlの銀ナノ粒子を単独で24時間処理するとリソソームのマスターレギュレーターであるtranscription factor EB(TFEB)は減少し、オートファジーマーカーであるmicrotubule-associated protein light chain 3B-II(LC3B-II)の発現は増大するが、同時にクロロキン存在下で50 μg Ag/mlの銀ナノ粒子を24時間併用処理しても、銀ナノ粒子単独処理の条件で認められた各因子の発現の更なる増減を認めなかった。 以上の結果から、銀ナノ粒子の直接的なリソソームの機能破綻は主に内腔pH上昇によるものであることから、内腔pH上昇を引き起こすクロロキン同時処理による相加的な細胞死への影響やオートファジー機構に与える影響は少ないものと考えられた。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
初年度は、研究計画にしたがい遂行することができた。特に近年注目されているライソトロピック化合物と銀ナノ粒子併用処理に伴うsynergisticな細胞応答の変化に着手し、一定の成果を得ることができた。次年度以降も、引き続き、遂行とともに研究成果を発信していく予定である。
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Strategy for Future Research Activity |
近年、相次いで報告されている小胞体ストレス/オートファジーの連携機構と銀ナノ粒子の細胞死との関連性が想定されるが、本機構におけるリソソームとオートファゴソームの膜融合機構との関連性は不明のままである。次年度以降は、上述の個々の先行研究と本実験で得られた検証結果を含めて研究報告の充実をはかっていく予定である。
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Causes of Carryover |
2023年度は、研究遂行に支障を来すことはなかったものの、2020年度より続いていた新型コロナウイルス感染症の規制解除により、連携研究機関への施設訪問、予定外の学会・研究会へ参加できる機会が多くなり、関連学会からの招待講演の機会も多かったことが次年度使用額の原因となった。しかしながら、研究遂行に影響はないため、次年度以降は解消されていくものと考えられる。
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