2023 Fiscal Year Research-status Report
DPCデータと病院医療情報システムを利用した手術部位感染症の同定に関する研究
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23K09735
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Research Institution | Chiba University |
Principal Investigator |
谷口 俊文 千葉大学, 医学部附属病院, 准教授 (20724826)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 手術部位感染症 / DPC / 病院医療情報システム / サーベイランス |
Outline of Annual Research Achievements |
手術部位感染症(SSI;Surgical-site infections)は医療関連感染症として、患者の安全の担保、医療の質を評価する上でサーベイランスすることが重要であるが、手術手技別にSSIを抽出してデータをまとめる事は大きな労力を要し、SSIが通常よりも多く発生している手術手技を発見して感染予防のための介入が効率的に行うことが難しい。本研究では「DPCデータおよび病院医療情報システムのデータウェアハウスを利用することで、手術手技別にSSIを同定すること」である。DPCコーディングでは「医療資源を最も投入した傷病名」、「手術(Kコード等で定義)」、「関連する手術・処置、重症度、副傷病名の有無等」以外にも、抗菌薬を含む薬剤の使用、培養など細菌検査の実施の情報が含まれており、手術手技ごとにSSIを抽出できる可能性が高い。このような形で医療データを利用して、病院の負担なくしてSSIのサーベイランスを行うことができる状況が望ましく、同一手術手技における自施設および他施設とのSSI発生率の比較をすることができる。 千葉大学病院が従来方式で手作業によりSSIを判定しておりゴールドスタンダードが存在する膵頭十二指腸切除(BILI-PD)、胆道再建を伴わない肝切除(BILI-L)、その他の肝胆膵手術(BILI-O)、大腸手術(COLO)、直腸手術(REC)、心臓手術(CARD)、胸部手術(THOR)、乳房手術(BRST)、帝王切開(CSEC)、人工股関節(HPRO)、脊椎固定(FUSN)、開頭術(CRAN)、腎臓手術(NEPH)、ヘルニア手術(HER)と虫垂手術(APPY)に絞って、DPCデータによるSSI症例の抽出条件を設定して、条件の割付により感度・特異度およびCohen’s Kappaを用いて精度調整する。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
JANISで要求されているSSIサーベイランス対象となる手術手技は約50あるが、その中で千葉大学病院が従来方式で手作業によりSSIを判定しておりゴールドスタンダードが存在する膵頭十二指腸切除(BILI-PD)、胆道再建を伴わない肝切除(BILI-L)、その他の肝胆膵手術(BILI-O)、大腸手術(COLO)、直腸手術(REC)、心臓手術(CARD)、胸部手術(THOR)、乳房手術(BRST)、帝王切開(CSEC)、人工股関節(HPRO)、脊椎固定(FUSN)、開頭術(CRAN)、腎臓手術(NEPH)、ヘルニア手術(HER)と虫垂手術(APPY)に絞って、DPCデータによるSSI症例の抽出条件を設定して、条件の割付により感度・特異度およびCohen’s Kappaを用いて精度調整している。データに関しては2017から2022年の6年分の感染制御部に保管しているSSIの生データと、同時期のDPCデータも検証に使用している。生データに関しては時期によってサーベイランスができていない手術手技も存在しており、存在しているデータで解析を進める。共同研究先としてゴールデンルールス株式会社を新たに選定して、DPCデータの受け渡しなどについて細部を詰めている。
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Strategy for Future Research Activity |
千葉大学病院が従来方式で手作業によりSSIを判定しておりゴールドスタンダードが存在する術式に絞って、DPCデータによるSSI症例の抽出条件を設定し、条件の割付により感度・特異度およびCohen’s Kappaを用いて精度調整しており、これを確立する。また共同研究先のゴールデンルールス会社におけるDPCデータの結果解釈および視覚化を試みる。 令和6年度は千葉大学病院で得られたSSI症例の抽出条件に関して、本院の協力病院の君津中央病院(感染制御室長・漆原崇司)の協力を得ながら、感度分析を行う。千葉大学と同様、2017年から2022年までの6年間データを後向きに取得していただき、感度分析を行う。もう一つの施設の選定は予定を変更する可能性はあるが、少なくとも2施設で感度分析を行う。 令和7年度はJANISのSSIサーベイランスとして提出するための書類作成のために必要なデータを、病院の電子カルテ、検査や手術・麻酔記録が格納されているデータウェアハウスから抽出する。DPCデータでは手術時間や米国麻酔科学会(American Society of Anesthesiologists:ASA)による術前身体状態の分類、創分類、またSSIを引き起こした原因菌などは得られないため、こうした情報は電子カルテ、麻酔記録や微生物検査システムから取得しなければならない。これは各病院に導入されている医療情報システムによりどの程度まで情報を容易に取得できるかという点において異なるが、データウェアハウスに格納される形式で抽出できる汎用性の高い方法によって作成する。
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Causes of Carryover |
DPCデータの解析を委託するために選定した会社に委託費用が発生する予定であったが、共同研究として費用が発生せずに研究を進めることのできる会社に解析を依頼することになったため、経費の繰越が発生した。 今後はDPCデータの解析をよりわかりやすくするためのツール作成や、より深くデータを解析するために別の委託をしなければいけないことなどを想定している。
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