2023 Fiscal Year Research-status Report
地域住民における農作業や除雪作業が心身の健康に与える影響:10年間の追跡
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23K09737
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Research Institution | Niigata University |
Principal Investigator |
田中 純太 新潟大学, 医歯学総合病院, 特任教授 (40401749)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
伊藤 由美 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任准教授 (30444160)
蒲澤 佳子 新潟大学, 医歯学総合研究科, 特任助教 (70529726)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 身体活動 / 非余暇身体活動 / 農作業 / 除雪作業 / コホート研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
非余暇身体活動は、所在地やコミュニティ構造、気候、主な移動手段など地域特有の環境因子により異なる。例えば、農業が盛んで冬季に積雪のある地域では、夏季は農作業、冬季は除雪作業が日常生活の維持に不可欠で、これらはその地域の環境要因に特有の非余暇身体活動(以下、地域の身体活動)になる。 新潟県魚沼地方は、日本有数の「稲作地帯」かつ「豪雪地帯」である。そこで、地域住民前向きコホート研究を通して、地域の身体活動たる農作業や除雪作業が心身の健康に及ぼす影響を明らかにすることを目的に本研究を実施している。 予備的に行った横断解析は、農作業及び除雪作業とサルコペニアとの関連を検討し、2023年度に学会、英文論文で発表した。SARC-Fで評価したサルコペニアを従属変数、農作業と除雪作業を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析、①農作業も除雪作業もしない、②どちらかを行う、③両方を行う、を独立変数とした多変量ロジスティック回帰分析を行った。農作業と除雪作業におけるサルコペニアの調整オッズ比[95% 信頼区間]は、各々0.80[0.63-1.03]と0.68[0.53-0.87]であった。また、①群と比較し、③群はサルコペニアの調整オッズ比が有意に低かった(0.63[0.47-0.86])。 そこで、握力データを用いて縦断解析を進めた。サルコペニアの指標である低握力を従属変数、農作業と除雪作業を独立変数とした多変量解析、前述の①、②、③を独立変数とした多変量解析を行った。その結果、農作業と除雪作業は低握力が少ないことと関連していることが明らかになり、すでに学会発表を予定し、論文も投稿中である。 地域の身体活動とサルコペニア(低握力)との関連を示した報告はなく、今後、これらの活動の安全性や効果的な適用についても検討が必要になる。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
地域住民前向き研究である魚沼/湯沢コホート研究フィールドで、地域の身体活動たる農作業や除雪作業が心身の健康に及ぼす影響を明らかにすることを目的に本研究を実施している。当初計画では、2023年度は魚沼コホート研究で南魚沼市の10年後アンケート調査を行ってアウトカムを収集し、予備的な解析も行うことにしていた。 まず、南魚沼市における魚沼コホート研究10年後調査は順調に進み、予定したアウトカム収集が完了してデータクリーニングを行っている。 次に、予備的な解析では、湯沢コホート研究での横断分析で、除雪作業及び農作業と除雪作業の両方を行うことが、サルコペニアが少ないことと有意に関連していた。この結果は、第13回日本リハビリテーション栄養学会学術集会で発表し最優秀演題賞を受賞、併せて英文でもTohoku J Exp Med誌に投稿し論文発表を行った。 また、すでに魚沼コホート研究で収集した握力データを用いた縦断分析も始めている。その結果、農作業と除雪作業は低握力が少ないことと関連していることが明らかになり、第11回日本サルコペニア・フレイル学会大会での発表を予定し、英文論文も既に投稿しReview待ちになっている。 さらに、新たな縦断解析も行っており、学会・論文による発表も整えている最中であることから「おおむね順調に進展している」と判断した。
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Strategy for Future Research Activity |
魚沼/湯沢コホート研究は前向きコホート研究で、2012-2015年度にかけてのベースライン調査をもって開始した。2017-2020年度に5年後調査、2022-2025年度に10年後調査を計画している。 このうち、2024年度は魚沼市で10年後アンケート調査を実施し、魚沼コホート研究としての10年後調査全データを集約し解析、また、前年度に得た解析結果や知見については、住民へのアウトリーチ活動を行う。また、2025年度は湯沢町で10年後調査、そして、魚沼/湯沢コホート研究におけるベースラインの予測因子と10年後アウトカムの関連について解析を行い、結果の取りまとめを行う予定である。 研究成果の地域還元に資するアウトリーチについては、対面、誌面やインターネット等の多様な媒体を用いて進めている。2024年度は、湯沢町公民館講座「知っ得!健康講座」において、5月27日(月)に生活習慣病をテーマに、また、7月29日(月)には骨密度をテーマに、体組成や骨密度を測定しながら雪国として地域の身体活動に着目した講演を行い、本研究についても紹介する。 また、従来コホート研究に関する情報は、市報みなみ魚沼、市報うおぬま、広報ゆざわに年2回(3月と9月)掲載しているほか、参加者には「けんこうかわらばん」としても提供している。今後、Facebookベージ(https://www.facebook.com/NUHPM/)と併用しながら、本研究の成果についても紹介することにしている。
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Causes of Carryover |
魚沼/湯沢コホート研究では、担当行政部署や住民と相談しながら、地域事情に合わせアンケート調査を行っている。これまでの調査は、主に対面での配布/回収であったが、一部は郵送を併用して実施した。 しかし、2024年度にアンケート調査を実施する地域では、進行する高齢化や過疎化等から対面での配布/回収が難しくなり、今回は全面的に郵送での実施が決まった。そのため、研究立案時に想定しなかった郵送経費が発生、しかも直近の関係閣僚会議が2024年秋の郵便料金値上げを了承したこともあり、2023年度中に行った前倒し支払い請求に加えて、今回、その配分も見直しを行った。 その結果、アンケート郵送料金の一部として、\1,100,000.-(\110.-を10,000名分)を確保した。また、データ処理を行うには、個人情報保護の観点から南魚沼市内の大学施設へ直接出向く必要があり、\100,000.-(\10,000.-を10回分)を新潟市内からの交通費として計上した。そして、以上を両方の実務担当である研究分担者の伊藤に配分した。また、残りの\600,000.-は、論文関連費用として研究代表者と研究分担者の蒲澤に二分した。 なお、2024年度に研究代表者が新潟大学から新潟県立大学に異動した。そのため、データ解析に使用するノートパソコンの更新も2023年度から2024年度に移行し、当該購入費用も繰り越した。
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