2023 Fiscal Year Research-status Report
超重度の重症心身障害児の生活を支えるケア向上のための研究方法開発とケア方法構築
Project/Area Number |
23K10146
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Research Institution | Setsunan University |
Principal Investigator |
亀田 直子 摂南大学, 看護学部, 講師 (70737452)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
家高 洋 東北医科薬科大学, 教養教育センター, 教授 (70456937)
池田 友美 摂南大学, 看護学部, 教授 (70434959)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | 重症心身障害 / 子ども / ケア / 生活 / ケア提供者 / 介護者 / 研究方法 / 質的研究 |
Outline of Annual Research Achievements |
「超重度の重症心身障害児の生活を支えるケア向上のための研究方法開発」(科研費20K10926)の継続課題であり、研究目的は、①超重症児のケア場面での介護者の経験を開示し蓄積することと②超重症児の環境刺激への応答や意図的反応をより適切に捉えるためのケア方法や研究方法を構築することである。ここでの「超重症児」とは、言葉やジェスチャーによる意思表示が難しい状態にある子どもを指す。 2023年度は、超重症児Aくんへのケア最適化のために介護者が新たな視点を得る過程に焦点を当てて分析し、国際学会で発表した。自記式質問紙、参加観察、グループインタビューを通じて、介護者たちは超重症児の動きを認識し、主観的感情をエピソードとともに共有することでAくんの潜在能力に気づいていた。共有されたエピソードの例として、他の子どもたちがAくんと絵本の間を遮った時に発した「ぁぁ---」という声や、食事介助後に通常は汚れるエプロンが全く汚れなかったことなどがあった。 超重症児たちの反応を読み解くには、介護者たちの不確かで主観的な感情を共有する必要があり、その方策を示した(亀田&鈴木, 2018)。本研究では、介護者たちが抱いた不確かな感情が、エピソードに含まれる状況とAくんの動きとの連動によって生じていることが明確に示された。 質的研究の正当性に関する考察として、2022~2023年度は「応答性理性」(Waldenfels, 2013)、「人間の2つの思考様式」(Bruner, 1986)、「間主観的普遍性」(河合隼雄)、「読み手の読後の了解可能性」(鯨岡峻)などを手掛かりに、質的研究の基本単位としての「応答性(一連の応答)」や、論文等の研究成果と読者との関係としての「応答性」について論考した。 今後も研究を継続し、超重症児たちのケアの質の向上と介護者の負担感軽減に貢献することを目指す。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
3: Progress in research has been slightly delayed.
Reason
超重症児へのケア最適化のための新たな視点を介護者が得る過程に焦点を当てて分析し、国際学会で発表できた。さらに、約10年間継続してきた質的研究の正当性に関する論考が進展し、特に、質的研究の基本単位としての「応答性」や、論文等の研究成果と読者との関係としての「応答性」など、本研究課題の研究方法開発との融合可能性が見えてきたことは「当初の計画より進展している」と言える。一方で、予定していたパンフレットの完成と論文投稿に至らなかったことは「計画から遅れている」と言わざるを得ない。したがって、総合的に「やや遅れている」と評価した。
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Strategy for Future Research Activity |
2024年度は、これまでの成果に基づくパンフレットの作成と論文執筆を進める。方法論的考察および質的研究の正当性に関する論考を成果として取り入れ、完成したパンフレットを組み込んだ新たな研究方法を開発する。この研究方法は、介護者の経験の開示と超重症児の生活を支えるケアの向上を同時に目指すものである。2025年度には倫理審査を受け、新たな研究方法によるデータ収集と分析を実施する。2026年度には、学術集会や臨床実践者との学修会を開催し、広く意見を求め、それらを執筆に反映させる。最終的に、超重度の重症心身障害児の生活を支えるケアの向上のための研究方法と具体的なケア方法を構築する。
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Causes of Carryover |
オンラインでの学会参加により、旅費の執行ができなかったため、次年度使用額が生じた。次年度使用額は、主に論文の英文校正、論文投稿、学会参加のための旅費などの経費に充てる予定である。
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