2023 Fiscal Year Research-status Report
感染症蔓延時の自宅・宿泊療養者のための栄養に配慮した食事支援シミュレーターの開発
Project/Area Number |
23K10340
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Research Institution | Ochanomizu University |
Principal Investigator |
須藤 紀子 お茶の水女子大学, 基幹研究院, 教授 (40280755)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2027-03-31
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Keywords | COVID-19 / 宿泊療養 / 保健所設置自治体 / 食事 / 弁当 |
Outline of Annual Research Achievements |
感染症の重症化予防のために栄養管理は不可欠であるが、COVID-19の宿泊療養者に提供された食事は、その不適切さが報道された。また、近年は様々な要因により感染症パンデミックの可能性が高まっており、今後の健康危機に備えて、感染者への食支援体制を構築しておくことが望まれる。そこで、今回の経験を次のパンデミックに活かすべく、第7波期間中(2022年7月6日~2022年8月30日)の宿泊療養者に対する食事提供の実態を明らかにすることを目的とした。 47都道府県、87の保健所設置市と23特別区の衛生主管部(局)を対象に質問紙による全数調査を実施し、食事の調達から提供までの準備、提供された食事の内容、災害時対応の活用の活用について調べ、88自治体から回答を得た(回収率=56.1%)。宿泊療養を実施していたのは、回答を得られた全ての都道府県(n=32、100%)と一部の政令指定都市(n=2、16.7%)のみであった。回答者は事務職が91.2%を占め、行政栄養士が献立作成に関与していた自治体は4自治体のみであった。1日の食事の予算は「2,501円~3,000円」が30.3%と最も多く、食事は宿泊療養施設(56.3%)や既知の提供事業者(43.8%)等から調達していた。療養者の要望や体調等に応じて「うどんやおかゆ等の療養食」、「ゼリー類・栄養補助食品」を提供するなど、柔軟な対応を行っていた自治体もみられた。食事の内容に対して寄せられた意見は、「揚げ物が多く脂っこい」(88.5%)、「味が濃い」(57.7%)などが多かったが、予算との関連はみられなかった。栄養バランスの改善には「全国の好事例の共有」が必要だと思うとの回答が最も多く、46.9%を占めた。食事提供に関わる災害時支援協定や災害用備蓄を利用した自治体は、それぞれ9.1%(n=2, n=3)と非常に少なかった。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
2: Research has progressed on the whole more than it was originally planned.
Reason
1年目(令和5(2023)年度)は「自宅・宿泊療養者に対する栄養支援の振り返り」として、全国の保健所設置自治体を対象に、自宅療養者に配送した食料支援パッケージの内容と宿泊療養者に提供した食事の内容を質問紙調査により把握し、食料支援パッケージや提供食に栄養学的配慮がなされていた自治体の特徴を明らかにする計画であったが、予定通り、郵送調査を実施できた。さらに、市町村が独自で支援を行った事例もみられたことから、一般市町村にも追加で質問紙調査を行った。
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Strategy for Future Research Activity |
2年目:1年目の質問紙調査及び弁当を提供した業者への聞き取りから、支援によく使用されていた食品や料理を抽出し、シミュレーターに搭載する食品リストを完成させる。 3年目:日本人が1日に摂取すべき栄養素等の量を示した「日本人の食事摂取基準」は、厚生労働省により5年毎に改定されている。2025年版は令和7(2025)年2~3月に公表されるため、最新の値を反映させたシミュレーターを開発する。 4年目:都道府県及び保健所設置市の職員(事務職員、保健師、管理栄養士)にシミュレーターを試用してもらい、その後のインタビューにより、改善点を明らかにしたうえで、改良を行う。最終年度であるため、質問紙調査と聞き取り調査の結果をオープンアクセスの英文論文2本にまとめる。
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Causes of Carryover |
アンケートの印刷・発送・入力を自分で行ったため、次年度使用額が生じた。 北海道で開催される日本公衆衛生学会に演題を2つ提出するため、旅費に当てる。
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