2023 Fiscal Year Research-status Report
訪問看護師を対象とした医療安全教育プログラムの開発
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23K10344
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Research Institution | The University of Shimane |
Principal Investigator |
吉松 恵子 島根県立大学, 看護栄養学部, 講師 (30642657)
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Co-Investigator(Kenkyū-buntansha) |
中谷 久恵 広島大学, 医系科学研究科(保), 教授 (90280130)
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Project Period (FY) |
2023-04-01 – 2026-03-31
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Keywords | 訪問看護 / 患者安全 |
Outline of Annual Research Achievements |
本年度は、教育プログラム内で使用する教材作成のため、訪問看護師の患者安全に対する態度に関連する要因の検討を行った。患者安全に対する態度は、「患者安全のための自己研鑽」、「インシデントの認識」、「インシデント経験に基づく対策」、「療養者の生活を守る看護」の4因子により構成されている。訪問看護師に実施した患者安全に関するアンケート調査における441名のデータをもとに分析を行った。「患者安全のための自己研鑽」において、年齢、看護師歴、雇用形態、職位、待機当番と有意な差がみられた。年齢では60歳以上の看護師(P<0.01)、看護師歴では、30年以上の看護師(P<0.001)、雇用形態では常勤の看護師(P<0.001)、職位では管理者(P<0.001)の得点が高かった。「インシデントの認識」、「インシデント経験に基づく対策」、「療養者の生活を守る看護」は各要因ともに有意差はなかった。訪問看護歴はすべての因子において有意差はみられなかった。 また、4因子すべてにおいて看護師の倫理的行動尺度との関連があり、倫理的行動がとれている看護師ほど患者安全に対する態度の得点が高かった(P<0.01)。これらのことより、訪問看護における患者安全では、訪問看護の経験はどの要因にも関連しておらず、訪問看護の経験が患者安全に対する態度の改善につなげられていない可能性が推察できる。その一方で倫理的行動はすべての要因に影響していることが明らかとなった。そのため、教育プログラムでは、訪問看護の経験を患者安全の改善につなげることができること、患者安全を倫理的行動と合わせて検討できる内容となるように検討している。
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Current Status of Research Progress |
Current Status of Research Progress
4: Progress in research has been delayed.
Reason
教育プログラムは訪問看護師の安全に対する積極的な態度を高めていくために、実践と教育が連動した教育プログラムの開発を目指している。教育プログラムでは、訪問看護師がインシデント経験から在宅に潜在するリスクを協議することを計画している。そのため、教育の主要アウトカムの構成を成す訪問看護師の患者安全に態度の「患者安全のための自己研鑽」、「インシデントの認識」、「インシデント経験に基づく対策」、「療養者の生活を守る看護」の項目から事例提示のための教材内容を検討している。教材を作成するために、先行研究やアンケート調査のデータより、訪問看護師の患者安全に対する態度の関連要因を明らかにするための分析を行った。現在、分析のデータをもとに、訪問看護師が自身の経験と倫理的行動とを合わせて安全について考えることができる事例内容について検討するとともに、訪問看護師が教育プログラムで活用しやすい映像配信教材の作成等の実施方法についても考案中である。
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Strategy for Future Research Activity |
令和6年は現在実施している教育プログラムの中で使用する教材作成と教育プログラムの実施の試案を作成する。作成後、訪問看護経験が10年以上の訪問看護師10名にスーパーバイズを得ることとする。教育プログラムに対する評価点はARCSモデルに基づいて、学習者の関心が得られるか(Attention)、親しみやすく訪問看護師の課題に即しているか(Relevance)、勤務をしながらの学習の進行に無理がなく学習を到達できる教育期間や参加方法であるか(Confidence)、この教育プログラムが働く意欲を向上させ参加すれば満足できそうか(Satisfaction)の項目で意見を聴取する。Zoomや訪問を活用し、直接・間接的対面で意見をいただき、教材と教育プログラムを完成させる。教育プログラムの作成後、教育プログラムによる介入群、介入を行わない対照群によるランダム化比較試験を実施するための研究倫理申請を行う。 令和7年度は、倫理申請を行った内容をもとに、教育プログラムによる介入群、介入を行わない対照群によるランダム化比較試験を実施する。情報公表システムを用い、A地方の無作為に抽出した訪問看護ステーションに勤務する訪問看護師に対し、依頼する。研究協力者を、Excelで乱数表を作成した上で無作為に2群(介入群、対照群)に分ける。介入群は作成した教材をもとに教育プログラムの実践を行い、対照群は日頃の業務を継続する。アウトカムの評価項目として、「訪問看護師の医療安全に対する態度尺度」「看護師の倫理的行動尺度改訂版」を測定する。また、ARCSモデルを用いた評価視点について調査し、教育プログラムの効果を評価する。
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Causes of Carryover |
教育プログラムでは、訪問看護師がインシデント経験から在宅に潜在するリスクを協議することを計画している。そのため、教育の主要アウトカムの構成を成す訪問看護師の患者安全に態度の「患者安全のための自己研鑽」、「インシデントの認識」、「インシデント経験に基づく対策」、「療養者の生活を守る看護」の項目から事例提示のための教材内容を検討している。教材を作成するために、先行研究やアンケート調査のデータより、訪問看護師の患者安全に対する態度の関連要因を明らかにするための分析を行った。教育プログラムの中で使用する教材作成と教育プログラムの実施の試案を作成し、訪問看護経験が10年以上の訪問看護師10名にスーパーバイズを得ることとしていたが、教材作成のための分析に時間を要した。そのため、次年度、訪問看護師が教育プログラムで活用しやすい映像配信教材の作成、教育プログラム試案に対する訪問看護師へのスーパーバイズを得るための予算使用を計画している。
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